2025年11月に Google が発表した開発支援ツール「Antigravity(アンチグラビティ)」。発表直後に話題となり、無料で使えるということで一度だけ触ってみた方も多いのではないでしょうか。

私自身もリリース直後に少しだけ試し、その後は Claude Code、Codex、Cursor を中心に開発を進めてきました。「Antigravity はあの時の印象のまま止まっている」という方は、私と同じ位置にいらっしゃるかもしれません。

しかしこの数ヶ月、特に直近1ヶ月で状況が変わってきています。本記事では、すでに他の AI ツールを使い込んでいる方の視点も含めながら、AI に詳しくない方にも分かるよう「これなら使えるかも」と思えるポイントをまとめました。


まずは直近1ヶ月のアップデートから

過去半年で最も注目すべきは、2026年3月末から4月にかけての一連のアップデートです。

Antigravityの直近1ヶ月のアップデートまとめ:統一権限システム、Linuxサンドボックス、MCP接続安定化、AGENTS.md対応の4項目を可視化したインフォグラフィック

統一権限システムの導入(4月8日リリース、v1.22.2)

ここ1ヶ月で最も大きな変更点です。AI にどこまで作業を任せて良いかを、一つの画面で一括管理できる仕組みが新しく入りました。これまでは「ファイルへの書き込みは許可するか」「ターミナルでコマンドを実行させるか」「外部サイトにアクセスさせるか」といった設定がバラバラに散らばっていましたが、これが整理されて見通しが良くなりました。

リリース直後に触って「何が起きているのか分からない」と感じて離れた方にとって、この変更は大きな安心材料です。まずこの権限画面から確認してみてください。

Linux サンドボックスとセキュリティ強化(3月25日、v1.21.6)

3月末には、AI が実行するコマンドを「サンドボックス」と呼ばれる隔離された安全な環境に閉じ込める機能が、Linux 環境にも対応しました。万が一 AI が意図しない動きをしても、本来のシステムに影響が及ばないようになっています。

MCP 接続の安定化(4月16日、v1.23.2)

MCP は、Antigravity を外部のサービス(GitHub や Slack、各種データベースなど)と接続するための仕組みです。4月のアップデートで接続周りの不具合が複数修正され、外部連携の信頼性が改善しました。

AGENTS.md 対応(3月5日、v1.20.3)

少し前になりますが、3月初旬には他の AI ツールと共通の設定ファイル形式「AGENTS.md」に対応しました。Codex や Cursor で使っている設定ファイルをそのまま流用でき、ツールを跨いだルールの管理が楽になっています。

これらの変更により、初期リリース時に「不安定だ」「使いづらい」と感じた方の不満点はかなり解消されています。


そもそも Antigravity とは何か

ここからは基本のおさらいです。Antigravity は、Google が提供する「AI に作業を任せるための新しい開発環境」です。VS Code という定番のエディタをベースに作られています。

Antigravityとは何かを説明する図解:チャット型AIが「相談相手」、Antigravityは「現場監督つきの作業チーム」というメタファーでの位置づけ

従来の AI ツール(ChatGPT や Gemini など)は、基本的に「質問すると文字で返してくれる」ものでした。一方 Antigravity は、AI が自分でブラウザを開いてサイトをクリックしたり、コードを書いて実行したり、エラーが出たら自分で直したりと、人間の代わりに作業そのものを完結させてくれます。

例えるなら、チャット型 AI が「相談相手」だとすれば、Antigravity は「現場監督つきの作業チーム」のような存在です。


チャット型 AI とは何が違うのか

「ChatGPT や Gemini で十分では?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。違いは大きく3つあります。

1. ブラウザを実際に操作して検証まで完結する

チャット型 AI は文字を返すのがゴールですが、Antigravity は作ったものを実際にブラウザで動かし、期待通りに動くかクリックや入力で確認します。エラーが出れば自分で直してもう一度試すまで自動です。

2. 複数の作業を同時並行で進められる

チャット型は1つの会話で1つの作業しかできません。Antigravity には「Manager View(マネージャービュー)」という管制塔機能があり、複数の AI を別々の作業に割り当てて、人間は進捗を眺めるだけになります。無料プランでは2つ、有料プランでは5つまでの AI を同時に動かせます。

3. 検証可能な成果物が残る

作業の過程で、タスクリスト・実装計画・スクリーンショット・ブラウザの操作録画などが「Artifacts(成果物)」として残ります。AI が何をどう判断したかが後から確認できるため、クライアント納品やチームレビューで信頼性が担保されます。


Claude Code・Codex・Cursor を使っている人から見た位置付け

ここが本記事の核心です。すでに他の AI ツールで開発が回っている方が、わざわざ Antigravity を足す価値があるのか。正直に評価します。

Cursor と役割が近い、けれど決定的な違いがある

CursorとAntigravityの比較図:両者ともVS Codeベースで構造は近いが、Antigravityは Gemini 3.1 Pro の200万トークン文脈窓とブラウザ検証統合が強み

Cursor も Antigravity も「VS Code ベースのエディタ+AI エージェント」という構造は同じです。普段使いの開発体験は近い部分があります。

しかし決定的な違いが2つあります。

一つは Gemini 3.1 Pro が標準で使えること。Gemini は200万トークンという非常に大きな文脈窓を持っており、Cursor や Claude Code が約20万トークンに留まるのに比べ、中規模コードベース全体を一度に読み込ませて議論できます。「全体を見渡してから設計してほしい」というタスクで明確な差が出ます。

もう一つは ブラウザ検証の統合度 です。Cursor も 2.0 以降でブラウザ機能を強化していますが、Antigravity は「AI が自分でブラウザを開いて、UI を触って、結果をスクリーンショットと録画で残す」というフローが最初から中核に据えられています。フロントエンドの動作確認や、外部サイトを巡回する調査タスクでは、Antigravity の方が一段上です。

Claude Code や Codex と役割は被らない

Claude Code はターミナル中心で、ファイルを深く読んで一箇所を確実に直すタイプの作業に強みがあります。Codex はクラウドで非同期にタスクを並列処理する用途に向いています。

Antigravity はこれらと真正面からぶつかりません。Antigravity の強みは「ブラウザを含めた検証ループ」と「複数エージェントを目で見ながら指揮する体験」なので、Claude Code や Codex の代替にはなりません。

現実的な判断

すでに Claude Code、Codex、Cursor の3つを使い分けている方は、おそらくツールが多すぎる状態です。冒頭でお伝えした通り、AI ツールは2つまでに絞るのが基本だと考えています。

私自身も、Antigravity を試すなら Cursor の代わりに置く のが筋だと判断しました。日々のエディタ仕事を Antigravity に移し、深掘り作業は Claude Code に残す、というシンプルな2本立てです。Codex の非同期バッチ処理が必要な場面は限定的なので、必要な時だけ呼び出す形に整理できます。

「3つ目を足す」のではなく「Cursor を置き換えるか検証する」という発想で触ってみるのが、現実的な使い始め方です。


仕事で活かす場面

職種や業種を問わず、以下のような場面で力を発揮します。

  • 新規事業・コンサルティング — クライアントとの打ち合わせ後、その場で要件をまとめて動くプロトタイプを作って見せられます。競合調査も、複数サイトを同時並行で巡回させて構造化されたレポートにまとめられます。
  • 研修・教育 — 受講者から「うちの業界だとどう使う?」と質問された瞬間に、業種特化のミニアプリを数分で作って見せる、といった使い方ができます。
  • 不動産・士業・製造業 — 書類のテンプレ整合チェック、法令の横断検索、業界データの収集など、定型的だけれど時間のかかる作業を任せられます。
  • EC・SaaS 運営 — 計測タグが正しく動いているかの定期チェックや、AB テスト結果の自動レポート作成など、運用フェーズの地味な作業に強みがあります。

正直なデメリットも知っておく

公平性のため、現時点での弱点もお伝えします。

  • プレビュー段階ゆえの不安定さ — 頻繁にアップデートが入るため、たまに不具合が発生します。本番業務でいきなりメインに据えるよりは、検証用途や新規プロジェクトから試すのが無難です。
  • クレジット制への移行で予算が読みにくい — 2026年3月から利用枠がクレジット制に変わり、規定が頻繁に更新されています。月の予算を確実に読みたい方には、Cursor Pro や Claude Code の方が向いている場面もあります。
  • UI が英語前提 — 日本語化は拡張機能で可能ですが、非エンジニアの方にそのまま勧めるには少し摩擦があります。
  • コミュニティの厚みが他ツールに劣る — Cursor には数千スター級のコミュニティ製拡張機能が多数存在しますが、Antigravity のエコシステムはまだ追いついていません。

Claude Code でないとできない機能

Antigravity の位置を理解するために、Claude Code が持つ強力な機能を一つ紹介します。

Hooks(フックス)機能 — 特定のタイミング(ファイル書き込み前、セッション開始時など)で決定論的なスクリプトを必ず実行できる仕組みです。「危険なコマンドは絶対にブロック」「特定の文脈は必ず注入」といった安全装置を、AI の解釈に頼らず確実に効かせられます。

これは Antigravity にはまだ無い機能で、企業の本番環境で AI を使う際の安全性確保において、Claude Code が一歩先を行っている部分です。Antigravity に統一権限システムは入りましたが、Hooks ほど細かい制御はまだできません。Antigravity 単体ではなく、Claude Code との組み合わせを推奨する理由の一つでもあります。


結論:もう一度触ってみる価値があるか

結論のまとめ図:Antigravityはもう一度触る価値あり、ただし「Cursorの代わりになるか」という視点で再評価する

リリース直後に触って離れた方へ、結論をお伝えします。

結論:もう一度触る価値はあります。ただし「Cursor の代わりになるか」という視点で。

3月末から4月のアップデートで、安全性と安定性が明らかに改善されました。特に統一権限システムは、初期リリース時の「何が起きているか分からない」という不安を大きく解消しています。

すでに Claude Code や Codex、Cursor を使っている方は、3つ目を足すのではなく、Cursor と比較して置き換えるかどうかを検証する形 で触ってみてください。Antigravity でしか得られない価値は、Gemini の長い文脈窓を活かした全体設計と、ブラウザ検証の統合度の高さです。逆にこれらが必要ない方は、無理に乗り換える必要はありません。

AI ツールは半年で景色が変わる世界です。一度離れたツールも、定期的に戻って試してみる価値は十分にあると感じています。