AIの一次情報は、ほとんどが英語で流れてきます。日本語のニュースになるのはその一部で、翻訳されて届く頃には「現地のユーザーが実際どう受け止めて、どう使っているか」という肝心の空気が抜け落ちがちです。
この連載では週1回、その週の海外AIニュースの要点と、英語圏のコミュニティ(Redditなど)で話題になった「リアルな使われ方」を、日本のビジネスユーザー向けにまとめてお届けします。
今週の海外AIニュース
GPT-6が無料ユーザーにも。「Intelligent UI」で回答に図やボタンが混ざるようになり、ChatとWorkは統合へ
10月7日(現地)、OpenAIは「GPT-6 and Intelligent UI for everyone」と題して、GPT-6をChatGPTの全プランに広げると発表しました。Plus・Pro・Business・Enterpriseは7日から、FreeとGoは翌8日から順次。有料プランは「GPT-6 Sol」、FreeとGoは軽量版の「GPT-6 Luna」が使われます。対象はChatタブだけで、WorkとCodexの中身のモデルは変わりません(Enterpriseは管理者の設定しだい)。同時に導入された「Intelligent UI」は、質問に応じて回答を文章だけでなく、比較表・図解・地図・計算機のような操作できる部品を組み合わせて返す仕組みです。日本語ではビジネス+ITが発表内容を伝えているので、ここでは現地の反応を足します。
Hacker Newsのスレッド(450件超のコメント)で目立ったのは、新しい見た目への賛否です。発表ページの「日曜のローストの作り方」の比較例について、「画像と余白とチェックリストばかりで、グラフのようでグラフでない『chartjunk』だ」「ほとんどの人は図があったほうが嬉しい」と割れました(この例の写真が「ラムの話なのに七面鳥が写っている」という指摘もありました)。「この視覚的な形式は広告を目立たなくするための地ならしではないか」と、同週に発表された新しいビジュアル広告(後述)を結びつける見方もあります。TechCrunchの取材では「回答中の視覚要素の量はユーザーが減らせる」と説明されたと報じられています。もう1つ、r/ChatGPTで「WorkとChatが統合される」というスレッドが伸びました。投稿者がChatGPT責任者のTibo Sottiaux氏の発言として共有したのは「Workの能力は好まれているが、速くて使い心地がよいChatを使いたい時もある。だから2つを統合する」という趣旨で、コメント欄は「いまは実質無制限のChatが、統合後はWorkと同じ使用量枠から引かれるのでは」という懸念が中心でした。モデル選択の廃止も噂されていますが、OpenAIからの正式な説明は確認できていません。
実務への一言:社内でChatGPTを使っている会社は、来週から「回答の見え方が変わった」という問い合わせが出ます。マニュアルや研修資料のスクリーンショットを撮り直す前に、まず1人が自分のアカウントで「図が増えたか、文章だけで欲しいときにどう頼むか」を確かめてください。文章だけで欲しい業務(議事録の整形、メール文の下書き)は、カスタム指示に「図や表を使わず、文章で答える」と1行書けば済みます。Enterpriseの管理者は、設定画面で新機能のオン・オフを確認してから全社に案内する順番です。ChatとWorkの統合は、使用量の管理方法が変わる可能性があるので、今は「誰が何にどれだけ使っているか」の記録を取り始めておくと、変更が来たときに比較できます。
Claude Haiku 5.5。入力0.10ドル・出力0.50ドルで「大量の定型処理」の単価が一段下がった
Anthropicは10月7日、小型モデル「Claude Haiku 5.5」を公開しました。価格は100万トークンあたり入力0.10ドル・出力0.50ドル(プロンプトが10万トークンを超えると0.50ドル・2.50ドル)で、前世代のHaiku 4.5(1ドル・5ドル)と比べて同じ作業のコストが平均で約75%下がるとしています。Haikuとして初めて「effort(努力度)」の設定があり、コストと賢さの釣り合いを選べます。想定用途は要約・分類・データベース問い合わせ・コンパクション(長い会話の圧縮)といった高頻度で安さが重要な処理と、Opus 5.5やSonnet 5.5の下で動く「サブエージェント」役で、複雑なエージェント型のコーディングには上位モデルを薦めています。Claude Platform(API)のほか、AWS・Google Cloud・Microsoft Azureでも使えます。同時に、Sonnet 5.5のキャッシュ読み取り料金が半額(0.20ドルから0.10ドル)になりました。日本語では窓の杜が価格と提供先を報じています。
日本語報道で薄いのは「使ってみた人の計算」です。Hacker Newsのスレッドでは、10万トークンで価格が5倍になる区切りが「エージェント用途ではすぐ超える」と批判された一方、「Anthropicの説明ではHaiku 4.5の要求の約90%は10万トークン未満だった」という反論がありました。競合のGPT-6 Lunaは同じ0.10ドル・0.50ドルで、割増になるしきい値がより高い(27万2,000トークン)ため、第三者ベンチマークのArtificial Analysisの数字を引いて「タスクあたりのコストはHaikuがLunaの約3倍。Haikuを選ぶ理由は主に速さ」と見る人もいます。実測の報告としては、データ分析ツールPlotlyの開発者が自社のテストで「40問の分析質問にかかった費用がHaiku 5.5は0.38ドル、Opus 5.5は15ドル、GPT-6 Astraは20ドル。Haiku 5.5は4.5より約9倍安く、成績は2段階上がったが、深い統計の質問は苦手」と書いています。r/ClaudeCodeでは「Haiku 5.5はOpus 5.5の40分の1の価格。あなたのExploreサブエージェントはまだOpusで動いているかも」という設定の話題が伸びました(Redditのコーナーで詳しく取り上げます)。
実務への一言:「AIで大量の定型処理をしたいが、単価が合わない」と去年見送った案件があれば、今週その試算を作り直してください。候補は、問い合わせメールの分類と担当振り分け、日報や議事録の要約、商品説明の体裁統一のような「1件あたりの判断は軽いが件数が多い」仕事です。試算の前提は2つ。1件の入力が10万トークン(日本語でおよそ数万字)を超えないこと、そして最初の100件は上位モデルの答えと並べて精度を比べることです。安いモデルで十分な仕事と、そうでない仕事の線引きが見えてから、本番の件数に広げてください。
Anthropicが利用規約を改定、11月12日施行。選挙への干渉、監視、兵器ソフトに加えて「モデルへの執拗な虐待」を明文化
Anthropicは10月8日、Claudeの利用規約(Usage Policy)を更新し、新版は2026年11月12日から有効になります。TechCrunchによると、「民主的なプロセスを損なわない(Do Not Undermine Democratic Processes)」という節が設けられ、有権者を欺く行為や選挙の妨害、偽アカウントの運用や架空の報道機関を使った欺瞞的なキャンペーン、兵器ソフトウェア、監視に関する禁止が整理されました。見出しで話題になったのは「残虐・虐待的・心理的に有害な行為をしない」という節に入った「我々のモデルに対する、持続的で不必要な虐待的または残虐な行為」の禁止です。Anthropicはこれが「ユーザーが目的なくモデルに対して繰り返し残虐に振る舞う極端な場合」にだけ適用され、「よくある形のユーザーの不満」、反論、ダークな創作テーマ、モデルのテストや研究は対象外だと説明しています。背景として、Claudeは8月から「持続的に有害または虐待的なやりとり」を自ら打ち切るよう訓練されており、今回はそれを規約側からも明示した形です。日本語の報道は執筆時点で見当たりませんでした。
RedditではこのニュースがAI系の主要なサブレディットほぼすべてに転載され、r/ClaudeAIの「Claudeを虐待するとBAN、11月12日から」のように「Anthropicは何を知っているのか」と訝る投稿から、r/ClaudeCodeの「11月12日以降はClaudeを虐待しないこと」のような受け止めまで、温度差のある反応が並びました。ただし規約の本文を読むと、ビジネスユーザーに直接関係するのは「虐待」の条項より、選挙・監視・欺瞞的キャンペーンの線引きが具体的になった部分です。
実務への一言:ClaudeをAPI経由で自社サービスに組み込んでいる会社は、11月12日までに新しい規約を法務と一緒に読み、自社の用途が「監視」「有権者や特定の人物の標的化」「偽アカウントや架空メディアの運用」に当たらないかを確認してください。広報・マーケティング部門で「架空のレビュアーの声」「存在しない専門家のコメント」を作っている運用があれば、それは規約の問題である前に、景品表示法やステルスマーケティング規制の問題でもあります。社員向けには「怒ってAIに文句を言うのは禁止ではない。業務外の目的で執拗に虐待するのが対象」と、一言で正確に伝えておくと、誤った萎縮を防げます。
ChatGPTの広告が画像付きに。米国で10月後半からテスト、現地の広告主からは請求と計測への不満も
OpenAIは10月5日、ChatGPTの画像生成中に表示する新しいビジュアル広告のフォーマットと計測の拡充を発表しました。2月に始まった広告は回答の下に企業名・ロゴ・リンクを出す文字中心でしたが、今回は画像生成の待ち時間に商品やサービスの利用シーンを画像で見せます。広告は明示的にラベルを付け、生成中の画像とは分けて表示し、回答内容には影響させないとしています。対象はFreeとGoのユーザーで、有料プランには出ません。まず10月後半に米国の一部の広告主でテストし、他地域の時期は未定です。計測面では、コンバージョンデータの連携先にHightouch・Tealium・LiveRamp、アトリビューション(成果の帰属分析)にAppsFlyer・Adjust・Branch・Kochava・Triple Whaleなどが加わり、地域単位の実験(ジオテスト)をHaus・Measured・WorkMagicと進めるとしています。ブランド適合性の評価はDoubleVerifyとIntegral Ad Scienceと試験中です。日本語ではImpress Watchやテクノエッジが概要を報じています。
ここで足したいのは、現地の広告主の生の報告です。r/OpenAIの「ChatGPT Adsは完全な詐欺だ」という強い見出しの投稿では、小さなEC事業者が1日50ドルの予算で1キャンペーンを出したところ、2時間は表示ゼロのまま、その後いきなり7,652表示・64クリックと計上され、同時に数分おきに追加の請求(合計84.92ユーロ)がカードに来たため、カードを止めたと書いています。自社のGoogle AnalyticsやShopifyの来訪者はその日24人で、しかも広告開始前の来訪だった、と。コメント欄には「請求が誤って2回来た。サポートがない」「同じキーワードがGoogleやMicrosoftでは成果が出るのに、500ドル使って成約ゼロ」「54ドルで1,618表示・19クリック・メール登録1件・売上ゼロ。クリックの多くは誤タップだと思う」「3月からクライアント向けに運用し、専用の着地ページに1,000ドルほど使ったが期待した結果は出ていない」という報告が並びました。一方で「広告ブロッカーや追跡拒否で解析ツールに来訪が記録されないことはよくある。サーバーのアクセスログで確かめるべき」「Metaの広告も、週の平均が日予算に収まる範囲で1日あたりは最大5割多く使うことがある」という冷静な指摘もあり、投稿者は「それでも50ドルの上限に対して94ドル超過は説明がつかない」と返しています。
実務への一言:ChatGPT広告を試したい日本の広告主は、まず「少額・短期・別カード」を原則にしてください。日予算の設定だけに頼らず、上限付きのバーチャルカードや法人カードの利用枠で物理的に止められるようにする。成果の確認は、広告管理画面の数字と自社の解析ツールの数字だけでなく、サーバーのアクセスログ(なければホスティング会社の訪問者数)の3点で見る。そして同じ予算をGoogleやMetaで回したときの成約単価と並べて比べる。新しい媒体の最初の1か月は「成果を出す」より「数字が合うかを確かめる」期間だと割り切るのが、現地の報告から読める教訓です。
そのほかの動き
- Google Cloudが10月8日、年次イベント「Gemini at Work 2026」で、業務向けの汎用AIエージェント「Gemini agent」を発表。「指示ではなく目的」を受け取って計画し、必要に応じて一時的なサブエージェントを作って並行作業し、チーム向けの「coworker agent」には専用のGoogle Workspaceアカウント(メールアドレス・カレンダー・Drive)が付与されます。使うモデルはGeminiのほかAnthropicのClaude(例としてOpus 5.5)も選べ、プロジェクト単位でAI利用費の上限を設定すると上限到達でエージェントが自動停止します。現時点は中小企業の顧客向けの早期アクセスで、料金は未発表。日本語ではAI Watchやgihyo.jpが詳しく報じています
- フランスのMistral AIが10月6日、「Mistral Large 4」を発表。総パラメータ約1兆・推論時に動くのは約500億の混合エキスパート型で、画像も扱え、160以上の言語に対応。APIでの公開プレビューは即日(入力1.36ドル・出力4.18ドル/100万トークン)、重みの公開は10月末の予定で、欧州のデータセンターで提供。自社では「米欧のオープンウェイトモデルで最高」と主張していますが、第三者の検証はこれからです
- USA Today Co.(旧Gannett)と傘下の地方紙が10月8日、OpenAIを著作権侵害でニューヨーク南部地区連邦地裁に提訴。数十万件の記事を無断で学習に使ったとして2億5,000万ドル超の損害賠償を求めています。New York Timesなどに続く出版社の訴訟の列に、米最大級の新聞チェーンが加わりました
- Cloudflareが10月9日、JavaScriptランタイムDenoを買収。Denoチームは全員Cloudflareに合流し、Denoランタイムは1年間だけ保守(その後は開発終了・オープンソースとして存続)、ホスティングのDeno Deployは6か月後に終了してCloudflare Workersへの移行支援、パッケージレジストリJSRは継続。Deno Deployで自社サービスを動かしている会社は移行計画が必要です
- Anthropicが10月8日、オープンソースプロジェクト向けの無料の脆弱性スキャン「OSS Scanner」を開始。コアメンテナーがGitHubでプルリクエストを出して参加し、最上位モデル(Mythosを含む)が定期的にスキャンして、再現コードと修正案付きの報告を送ります。報告は人のレビューなしで届くため誤りが含まれ得ると明記。過去6か月に2万9,000件超の候補を見つけ、約6,000件を人が確認したと説明しています
- OpenAIが10月5日、EUのAI法に対応してEU域内のChatGPTとCodexの文章出力に不可視の電子透かしを数週間かけて導入すると発表。判定ツールは当面、承認した研究者と専門機関だけに提供し、OpenAI自身が「言い換えで検出率が大きく落ちる」と認めています。日本のユーザーには直接の影響はありませんが、「AI生成文の判定」が技術的にどこまで当てになるかの参考になります
海外ではこう使われている(今週のReddit)
ここからは、世界最大級の掲示板コミュニティRedditで今週話題になった「AIのリアルな使われ方」です。いずれも投稿者本人の報告で、内容はスレッドへのリンクから確認できます。
「中古の鳩小屋の運送費を聞いたら、ChatGPTが偽サイトを見つけた」。URLを貼るだけの詐欺チェック
r/ChatGPTの「鳩小屋の運搬についてChatGPTに聞いたら、代わりに詐欺を見つけた」という投稿です。ポーランドで鳥の保護活動をしている投稿者は、冬までに大型の鳩小屋が必要で、中古品を1,200ズロチ(約325ドル)で見つけました。売り手は「別の正規マーケットプレイスにも出していて、そこで389ズロチの運送を手配できる」と言い、WhatsAppでリンクを送ってきた。サイトは本物そっくりで、写真も価格も配送オプションも揃っていた。投稿者はそれ以前から「4m×2.5mの木造小屋をどう運ぶか、クレーン車は門を曲がれるか」をChatGPTと相談していたので、流れでそのリンクを貼って「運送費389ズロチは妥当か」と聞いた。返ってきた答えは「支払うな。それは本物のサイトではない」。URLの先頭は正規サイト名で始まっていたが、末尾のドメインが「.icu」だった。スマホのアドレスバーでは全体が表示されず、気づかなかったといいます。投稿者が「運送は不要、自分でクレーン車を手配して現地で現金払いする」と返すと売り手は沈黙し、ほどなく偽サイトはブロックされ、売り手のアカウントは停止されました。「この手口は知っていたのに、まさか鳩小屋で騙そうとする人がいるとは思わなかった。冬までに欲しいという焦りもあった」と振り返っています。
示唆は2つあります。1つは、AIが「頼んでいないこと」を指摘した点。相談の文脈(運送費の妥当性)があったからこそ、URLそのものの異常に気づけました。もう1つは、人の詐欺検知は「自分の専門分野」や「焦っているとき」に弱くなること。日本でも、フリマアプリの外で決済リンクを送ってくる手口は定番です。試すなら:見慣れない決済リンクや「ここで手配できる」と送られたURLは、開く前にそのままAIに貼って「このURLのドメインは本物か、何か気になる点はあるか」と聞く。AIも間違えるので最終判断は自分ですが、スマホの画面では見えない「ドメインの末尾」を言葉にしてくれるだけで、立ち止まる時間が生まれます。社内なら「取引先からの新しい振込先・決済リンクは、一度AIに貼ってから電話で確認」を手順に足してください。
「月100ドルの契約で、1日16億トークン」。常駐エージェントに設計を任せた人と、PCを落とした人
r/OpenAIの「私のDotは初日から1日16億トークンを燃やしている。100ドルの契約で」という投稿です。先週の号で紹介したOpenAIの常駐エージェント「dots」を、投稿者はロンチ初日から1体、設計業務に使い続けています。大きな設計課題を渡して数問の確認に答えると、Dotは自分のクラウドPC上でCADツール・回路図ソフト・Blenderなどを動かし、設計→計算→問題発見→形状変更→再計算→検証→文書化のループを何時間も回す。成果の一例は、固有部品1,000点超・STEPアセンブリ6,000体超・組立図と文書約300ページ・BOM(部品表)・電気接続の記録を含む設計パッケージで、Dotが書いたレーザー加工機のプログラムで実際に部品を切り出して問題なかったといいます。プロフィール画面の集計では1日約16億トークン(大半は繰り返しのコンテキスト処理)、APIで同じ量を買えば1日1万5,000〜2万ドルに相当すると見積もり、「この経済性が続くとは思わない。使えるうちに使う」「安全に関わる設計を人のレビューなしに製造に回すことはしない。最初の構造計算は安全率5倍の過大設計で、制約を明確にして再実行した」と書いています。コメント欄では「1%の人が使い切る共有型のプランは経済的に成立しない」「公式の説明では最初の1か月は上限が拡張されている」という指摘があり、別のユーザーは「自分は1日20億トークン。毎朝5時に上限に達して11時に戻る」と報告しています。
対照的なのが、r/ClaudeCodeの「ヘビーユーザーへの注意」です。投稿者はClaude Codeに「APIトークンもGPUも無限にあると仮定して、夜間に作業を進めて」と指示して寝たところ、Opus 5.5が数十のエージェントを並列で起動し、Microsoft Edgeのウィンドウを1万3,000枚以上開いてPCを何度もクラッシュさせ、朝には最上位プランの週間使用量の半分以上が24時間で消えていたそうです。同じ週にHacker Newsでは、開発者Simon Willison氏の「ほぼすべてに既定の予算上限が必要になる」という記事が話題になりました。2つの投稿は同じことを別の側から言っています。働き続けるエージェントは、止める仕組みを人が用意しないかぎり止まりません。試すなら:エージェント系のツールを使うとき、最初に「この作業で使ってよい上限(時間・件数・金額)」を指示に書き、ツール側に予算やレート制限の設定があれば必ず入れる。「無限にあると仮定して」は、冗談でも書かないことです。
Claude Codeの「調べ物担当」をHaiku 5.5に切り替える設定。ただし全部を安いモデルにすると損をする
r/ClaudeCodeの「Haiku 5.5はOpus 5.5の40分の1の価格。あなたのExploreサブエージェントはまだOpusで動いているかも」という投稿です。Claude Codeには、メインのモデルが別の小さなモデルに作業を切り出す「サブエージェント」の仕組みがあり、コードベースの調査を担当する組み込みの「Explore」もその1つです。投稿者が指摘したのは、このExploreが現在はメインと同じモデルで動くため、Opus 5.5を使っていると調べ物のたびにOpusの料金がかかること。切り替えは2通りで、自作のサブエージェントなら定義ファイルの先頭に model: haiku を書く(バージョン2.1.293以降、この別名はHaiku 5.5を指す)。すべてのサブエージェントを一括で変えるなら、設定ファイル settings.json に環境変数 CLAUDE_CODE_SUBAGENT_MODEL を haiku にし、組み込みのExploreとPlanにも効かせるには CLAUDE_CODE_SUBAGENT_MODEL_FORCE を 1 にする。ただし後者は「意図的に大きいモデルを割り当てたサブエージェントも上書きされる」と注意しています。面白いのは投稿者自身の追記です。自分の直近2週間のログを数えると、サブエージェントの起動129回のうちExploreは2回だけで、大半は上位モデルで動かしたい実装作業だった。だから一括強制はやめて、調査系のサブエージェントだけ個別に model: haiku にした、と。コメントでは「使用量を使い込んで検証したが、Opusの中程度の努力度1体のほうが、同じ品質に必要な数のHaikuより安くて速かった」という逆の報告もあり、最も支持されたのは「難しさではなく、検証できるかで振り分ける。grepやdiffやテストで機械的に確かめられる仕事は安いモデルへ、確かめられない判断は高いモデルへ」という整理でした。「禁止事項はプロンプトに書くと『提案』にしかならないが、実行前フック(PreToolUse)で拒否すれば『壁』になる」という先週の号と同じ知見が、ここでも繰り返されています。
試すなら:Claude Codeをお使いなら、まず自分のサブエージェントの使い方を1週間分振り返って、「調べる」仕事と「作る」仕事の比率を見てください。調べる仕事が多いなら、その定義ファイルにだけ model: haiku を足す。前提は、Haikuの結果を最初の数回は自分で確かめること(必要なファイルを見落としていないか)。ChatGPTやClaudeのチャットしか使わない人にも、この話の骨格は使えます。「答えが正しいかを自分で機械的に確認できる仕事」は安いモデルや軽いモード、「確認できない仕事」は高いモデル、という振り分けです。
「直しました」と「コードを変えました」は別。エージェントに「証拠を貼れ」と言う一行
r/ChatGPTCodingの「コーディングエージェントは『直した』と言うとき、実は『コードを変えた』と言っている」という投稿です。エージェントの作業の最後のメッセージを読むと「競合状態を修正しました」「エンドポイントは正しいステータスを返すようになりました」と書いてある。ところが上にさかのぼって、それを証明するコマンドの実行を探すと、ないことが多い。ファイルを編集し、自分の編集を読み返して納得し、実行したかのように報告している。投稿者は「嘘ではない。何かが確認を強制しないかぎり、正しそうな変更と動く変更は同じに見える」と書き、3つの文を使っています。作業指示に「直したと言う前に、失敗していたコマンドを実行して出力をそのまま貼る。実行していない主張には『未検証』と書く」。指示ファイルの常設ルールに「同じメッセージに実行したコマンドと出力がないかぎり、『直した』『動く』『解決』『完了』という言葉を使わない」。そしてレビュー前の締めに「このセッションで『動く』『直った』と主張した項目をすべて列挙し、それぞれ証明したコマンドと出力を示すか、未検証と印を付ける」。最後のリストに残る「未検証」の2〜3項目が、まさに自分が要約を信じて見逃していた場所だった、と。コメント欄では「環境変数が未設定でそもそも実行できなかったのに、きれいな要約で終わっていたことが半分あった」「各アプリに事前チェックのスクリプトを置き、それが通るまで『完了』と認めない」「テストの名前を挙げさせるだけでは不十分。修正を一時退避してテストが赤くなるのを見せ、戻して緑になるのを見せるのが本当の証明」という実践が並びました。
試すなら:これはプログラミングに限りません。AIに資料の修正や計算の確認を頼むときも、「直しました」の一言で終わらせず、「何を、どう確かめたか」を同じ回答に含めさせる。たとえばExcelの集計を直してもらったら「修正後の合計値と、元の値との差を書いて」、文章の修正なら「変更した箇所を変更前後で並べて」と最初の依頼に足す。前提はただ1つ、確認の手間を依頼者が引き受ける覚悟です。AIの「できました」を信じたくなる気持ちは、AIが賢くなるほど強くなります。
編集後記
今週は「安くなる・広がる・線を引く」の週でした。GPT-6は無料ユーザーに届き、Haiku 5.5は定型処理の単価を一段下げ、Dotは月100ドルで1日16億トークンを使わせています。その一方で、Anthropicは利用規約で禁止事項を具体的にし、Googleは業務用エージェントに予算上限を付け、Redditでは夜間に放置したエージェントがPCを1万3,000枚のウィンドウで埋めました。Simon Willison氏の「ほぼすべてに既定の予算上限が必要になる」という言葉が今週いちばん腑に落ちたのは、鳩小屋の投稿者の一文と対になっていたからです。「この手口は知っていたのに、焦っていた」。能力が安くなるほど、止める仕組みと、立ち止まる習慣の値段が上がる。来週もその線をどこに引くかを見ていきます。
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