会社説明資料27ページをAIで刷新。テンプレート設計から全工程を公開

スライド作成をAIに任せたい。でも、出てくるのはどこかAIっぽくて、会社の顔として出せるものにならない。そう感じている方に向けて、実例を1つ公開します。

KOIYALの会社説明資料を、2026年8月版として全面的に作り直しました。全27ページ、制作の主役はAIです。新しい資料はこちらからダウンロードいただけます。

この記事では、この資料をどう作ったかをそのまま書きます。AIに頼んだら一発できれいな資料が出てきた、という話ではありません。テンプレートを設計し、AIっぽさを排除するルールを敷き、機械検査を挟み、失敗した画像は作り直す。読み終わる頃には、スライド作成にAIを使うときに何を準備すればよいかが見えるはずです。

最初にやるのは、スライド作りではなく会社のテンプレート作り

いきなり1ページ目から作ってとAIに頼むのは、実は一番の遠回りです。ページごとにデザインがバラバラの、寄せ集めの資料ができあがります。

最初にやったのは、会社としてのスライドテンプレートを1つの仕様ファイルに固めることでした。ウェブサイトやロゴで使っているブランドの色、資料で使うフォント、アイコンの様式。自社の資料はこう見えるべきだ、という基準を、AIが読める形の仕様に翻訳する作業です。中身は具体的にはこういうものです。

  • 色: ブランドの青(#0557FF)、アクセントの黄(#F3E42A)、本文のグレー3段階など、使ってよい色を色コードで列挙
  • 文字: タイトル42px、リード28px、本文24px、注釈18pxのように、役割ごとのサイズを固定
  • アイコン: 種類の違うアイコンセットを混ぜない(線の太さが揃った1セットに限定する)
  • 画像: 使ってよい画像ファイルを列挙(ここにない画像は使えない)
  • ページのリズム: どのページを情報の濃いページにし、どのページを余白の多い区切りページにするか

AIはこのテンプレートの範囲内でだけスライドを作ります。そして機械検査が、仕様にない色コードや規定外のフォントサイズ、要素のはみ出しを自動で見つけます。検査エラーが0になるまで、人間はレビューしません。人間の目は、機械が見つけられない問題のためだけに取っておきます。今回の最終版は27ページで検査エラー0です。

このテンプレートは今回の資料のためだけのものではありません。一度作れば、営業資料でもセミナー資料でも同じ仕様ファイルを使い回せます。つまりテンプレート作りは1回きりのコストで、以後のすべての資料作成が速く、揃った見た目になる投資です。

制作物はPDFに加えてPPTX(PowerPointで編集できる形式)でも書き出しています。AIの制作物を人間が編集できない一枚絵にしてしまうと、ちょっとした文言修正のたびにAIの工程を回すことになるからです。逃げ道を残しておくのは実務では大事です。

AIの出力を機械検査で挟むという考え方自体は、先日公開した社内運用の記事で書いたものと同じです。スライド制作はその応用先の1つです。

AIっぽい表現は、ルールで排除する

テンプレートが守るのは見た目です。もう1つの柱が、文章のAIっぽさを防ぐ表現ルールです。

AIが書く文章には癖があります。ダッシュ記号の多用、タイトルと小見出しで同じことを2回言う同語反復、どのページにも付けたがる決まり文句の締め、それらしいけれど中身のないバズワード。1つ1つは小さくても、積み重なると読んだ瞬間にAI製と分かる質感、いわゆるAIスロップになります。私たちはこれを、文章の構成、使う単語、記号、改行の位置まで含めた明文のルールで潰しています。今回の資料に効いたルールの例を挙げます。

  • ダッシュ記号は使わない(AI文章の代表的な癖のため)
  • タイトルと小見出しの同語反復は削る。各ページの締めの一文は1行まで
  • 顧客向けの説明に社内の造語やバズワードを使わない。平易な言葉に言い換える
  • 会社の固有の言葉は正しい表記の一覧を先に渡し、勝手に直させない

3つ目には実例があります。私たちは社内でAIの運用手順書のことを「ハーネス」と呼んでいますが、資料の中でこの言葉をサービス名のように使いかけて、やめました。この種のバズワードはすぐに陳腐化するからです。社内で通じる言葉と、初めて資料を見る人に伝わる言葉は違います。顧客向けの文章では、業務への組み込み、手順書の整備といった平易な言葉に言い換えました。

4つ目にも実例があります。KOIYALが大切にしている言葉の1つに喜怒哀楽楽があります。喜怒哀楽の最後にもう1つ楽を足した造語で、挑戦には喜怒哀楽が伴うけれど、最後は楽しかったで終われる体験をつくる、という意味が末尾の1文字に込められています。AIはこれを一般的な四字熟語の喜怒哀楽に修正してしまいました。誤字の訂正としては正しい動きだからこそ、わざとそうしている言葉は先に一覧で渡しておく必要があります。

数字は分析体制ごとAI化してあるから、すぐ出せる

新しい資料には、自分たちがAIをどう使っているかを紹介するページがあり、サイト閲覧数が3月から7月で約15倍になったという実測の変化を載せています。

数字の変化を示すスライド。行動量のグラフと、閲覧数が約15倍になったことを示すパネル

この数字を出すのにかかった時間は数分です。理由は単純で、資料作成とは別に、アクセス解析(GA4)や広告、検索データの分析基盤そのものをAIから直接触れる状態に整備してあるからです。資料に実績の数字を入れたいとなったとき、普通は解析ツールにログインして、期間を指定して、CSVをダウンロードして、表計算ソフトで月ごとに集計して、という手作業が挟まります。うちではその部分をAIが直接やります。分析基盤への接続まで整備してあると、スライド作成のAI化はこうして周辺の仕組みと噛み合って一番効きます。

ただし、集計された数字をどこまで紙面に載せるかは人間が決めます。データを取りに行くのはAIの仕事、出す範囲を判断するのは人間の仕事。この分担を逆にすると、根拠のない数字や、出すべきでない数字が紙面に混ざります。

デザインの向性も、テンプレートと同じ発想で決める

資料内のイラストは、粘土細工(クレイ)風のスタイルで統一しています。これもどの画像生成AIを使うかから入ったのではなく、テンプレートと同じ発想で、企業としてどんな絵柄を自分たちのデザインとするかを先に決めた結果です。方向性が1つ決まっていれば、AIは同じ世界観の画像を何枚でも量産できます。

その上で、失敗を1つ公開します。人間がAIを管理しながら使うことを表すページの画像として、最初に生成されたのが左の絵です。

左が最初に生成された、人がロボットの手綱を引く絵。右が作り直した、人とロボットが机を並べて作業する絵

人がロボットの手綱を引いている構図。管理という言葉に引っ張られた、直訳的な絵です。構図としては指示に忠実で、機械検査ならエラーなしで通ります。しかし私たちはこの絵を使うのをやめました。AIとはいえ、手綱を引いている絵はいやらしさが出るからです。作り直したのが右の絵です。人とロボットが同じ机に並んで、それぞれのパソコンで作業しながら、人がロボットの画面を指さして確認している構図です。

左右を並べて見ると、伝わる印象がまったく違うことが分かると思います。左はAIを支配する会社に、右はAIと一緒に働く会社に見える。この判断は、今のところAIにはできません。どちらの絵も破綻なく描けてしまうからこそ、どちらを会社の顔にするかは人間が選ぶ必要があります。

なお、実際の私たちのAIの使い方は、この絵の1つの構図には収まりません。壁打ち相手として上司のように意見をもらう場面もあれば、部下として作業を任せる場面も、同僚やパートナーとして並走する場面もあります。役割を1つに固定しないからこそ、資料の絵には上下関係を固定しない構図を選びました。

デザインの安っぽさは、機械検査では見つからない

途中のバージョンを全ページ見比べたとき、企業のAI活用レベルを階段状に示すページだけが、どうにも安っぽく見えました。そこで作り直しました。左が作り直す前、右が作り直した後です。

左が作り直す前のスライドで灰色の四角が並ぶだけの構成。右が作り直した後でアイコンと具体例、範囲を示す帯がついている

各レベルにアイコンと具体例を加え、カードの様式を統一し、どのサービスがどのレベルをカバーするかを帯で示しました。安っぽいという感覚を、AIは情報密度が低い、様式が他ページと揃っていない、という具体的な作業に翻訳して直す必要があります。機械検査は仕様違反を見つけられますが、この種の印象は見つけられません。だからこそ、全ページを画像に書き出して人間が目視する工程を必須にしています。

指摘は直して終わりにせず、ルールにして蓄積する

今回の制作では、初稿から公開まで9つのバージョンを重ね、直した点は40件近くありました。ここで一番大事にしているのは、指摘をその場で直して終わりにしないことです。すべての指摘は、次回も適用される制作ルールとして文書に書き足します。今回の制作だけで、ルール集には6本の規則が増えました。先に挙げた表現ルールの多くも、こうして過去の指摘から生まれたものです。

ルール化しておくと、次に資料を作るときはAIが最初からこのルールを守った状態で初稿を出してきます。差し戻しの往復は、制作のたびに減っていく設計です。人間のレビューが、前にも言ったはずの指摘の繰り返しになっているなら、それはAIの問題ではなく、指摘を蓄積する仕組みがない問題です。

資料の設計も変えた: 27ページに減らして、募集ページを足した

工程の話が続いたので、資料の中身の変更にも触れておきます。旧版は45ページありましたが、1ページ1テーマに絞り直して27ページにしました。冒頭には「1枚でわかる株式会社KOIYAL」というページを置き、事業の全体像を1枚で掴めるようにしています。

もう1つ、今回の資料で一番新しい試みは、最後の方に置いた「一緒に挑戦しませんか」というページです。KOIYALは好奇心を何より大事にしている会社で、やってみたいことが常にたくさんあります。成果報酬型でのECの立ち上げや広告運用、写真編集の自動化、講座のオンライン学習サイト化。ただ、好奇心のままに広げたい構想の中には、自分たちだけでは完結しないものもあります。売る商品は事業者の方が持っているし、自動化を検証するには実際の写真が、学習サイトには実際の講座が要る。それなら資料の中で正直に、これを一緒にやりたいですと手を挙げてしまおう、と作ったのがこのページです。会社説明資料としては変わり種ですが、読んだ方との関係が発注と受注だけでなく、一緒に試す仲間からも始まったら嬉しい、という私たちらしいページになったと思っています。

公開の最終判断は必ず人間が握る

完成した資料は、PDFの現物を添えて社内の承認チャンネルに送り、OKが出て初めてウェブサイトに反映されます。AIが完成と同時に勝手に公開まで進めることはありません。制作は何往復でもAIと自動化に任せますが、外に出る瞬間の判断だけは人間の仕事です。この運用は資料に限らず、ブログもSNSも同じです。実はこの記事自体も、同じ承認フローを通ってから公開されています。

スライド作成にAIを使いたい方への実務的なまとめ

最後に、今回の工程を一般化して5つにまとめます。

  1. 個別のスライドより先に会社のテンプレート(色、フォント、使ってよい素材)を仕様として固定し、AIにはその範囲内でだけ作らせる
  2. 見た目のテンプレートとは別に、AIっぽい表現を排除する文章ルールを明文化する(記号、同語反復、バズワード、固有の言葉の保護)
  3. 数字はAIに実データを取りに行かせ、載せるかどうかの判断は人間がする。分析基盤ごとAI化しておくと数字が数分で出る
  4. 指摘は、その場で直すだけでなくルールとして文書に蓄積する。次の制作の初稿品質がそのぶん上がる
  5. 機械検査で拾えない印象の判断と、公開の最終判断は必ず人間が握る

道具の名前よりも、この分担設計のほうがずっと大事です。同じ進め方は、営業資料でも研修資料でも提案書でも使えます。

新しい会社説明資料はこちらです。KOIYALがどんな会社で、何をやっていて、これから何を一緒にやりたいと思っているか。27ページに凝縮しましたので、ぜひご覧ください。自社でもこういう体制でAIに資料を作らせたい、という企業の方のご相談もお待ちしています。