情報システム担当から「Copilot Credits の従量課金を有効にしてよいか」と聞かれて、何を決めれば承認できるのか分からない。この記事はその状態の経営者に向けて、2026年10月30日時点の Microsoft の公式資料をもとに、決めることを5つに絞って書きます。

Microsoft 365 Copilot の料金は、2026年に「1人いくら」のライセンスだけではなくなりました。Microsoft は2026年9月25日の管理者向け通知で、料金を2つに分けました。日常のAIは1人ごとのライセンスに含めたまま、重い処理や上位モデルは Copilot Credits の単位で使った分だけ課金します。1クレジットは0.01米ドルです。ここで言う Microsoft 365 Copilot は、Microsoft が2026年8月に Microsoft Copilot へ名称を変えたと Copilot Credits Guide 2026年11月版に記載している製品です。個人向けの Microsoft Copilot と区別するため、この記事では従来の名前で書きます。

Copilot Credits とは、Copilot Cowork、Copilot Studio のエージェント、Work IQ API、Dynamics 365 や Power Platform のAI機能で共通に使う、使用量の単位です。テナント単位でまとめて消費し、会社全体の使用量の合計で費用が決まります。

結論を先に書きます。

  1. 定額に含まれるのは日常のAI、従量になるのは重い処理です。 Copilot Chat、Word や Excel の Copilot、Researcher や Analyst はライセンスに含まれたままです。Cowork、Copilot Code、上位モデルの選択、Work IQ API、Copilot Studio のエージェントの一部がクレジット払いです。
  2. 請求を止めるのは Microsoft 365 管理センターの支出ポリシーで、Azure の予算アラートは止めません。 支出ポリシーは使ってよい人の指定も兼ねるので、予算より先に「誰に使わせるか」を決めます。
  3. 2026年12月1日から、販売店経由で新しく買う Copilot Business は従量課金が最初から有効です。 初期値は1人あたり月4,000クレジット、約40米ドルです。これは上限で、使わなければ請求はありません。
  4. ライセンスを持たない社員にエージェントだけ使わせる設計は、使う頻度で損益が分かれます。 公式の単価で計算すると、1人が中くらいの作業を月47回(1営業日あたり2回強)より多く使うなら、ライセンスを買って Copilot 本体で同じ仕事をさせるほうが安くなります。

Copilot の料金は、1人いくらと使った分の2本立てになった

Microsoft は2026年9月25日の管理者向け通知 MC1479276 で、料金の考え方を2層に分けました。原文では、日常のAI(Everyday AI)は利用者ごとのサブスクリプションライセンスに含まれます。新しい上位モデルを含む高度なAI(Advanced AI)は、Copilot Credits による従量課金で提供されることがあります。利用者が上位モデルを選んだとき、または決められた上限に達して延長を選んだときに従量課金へ切り替わります。Copilot での従量課金の展開は2026年第4四半期に始まる、とも書かれています。

Copilot Credits Guide 2026年11月版は、利用者ごとのライセンスに含み続けるものを5つ明記しています。

  • Copilot Chat
  • Word・Excel・PowerPoint・OneNote・Outlook・Teams の Copilot
  • Researcher・Analyst・Facilitator などの Microsoft 製エージェント
  • メール・予定・ファイル・人の情報をもとにした回答(Work IQ による根拠付け)
  • 処理に応じて複数のモデルを使う仕組み

同じガイドの27ページには、利用者単位のサブスクリプションへの投資を続けるとする一節があります。定額の範囲が急に狭くなる計画ではないことが読み取れます。

一方で、Microsoft 365 管理センターの費用管理で扱う従量課金の対象として、Learn は2026年10月28日時点で次を挙げています。

従量課金の対象 ライセンスの条件 何をするものか
Copilot Cowork Microsoft 365 Copilot ライセンスが必要 目的を伝えると複数の手順を代わりに進める仕組み。2026年6月16日に一般提供
SharePoint と OneDrive の高度な作業 同上 サイトやファイルをまたぐ重い処理
Work IQ API ライセンス不要(API の利用はライセンスに含まれない) 自社のアプリやエージェントから Microsoft 365 のデータを使って推論する
Copilot Managed Runtime Cowork や Copilot Studio で作ったアプリを動かす環境
Teams Phone Agent 電話応対のエージェント
Copilot Code ライセンスが必要・Frontier(先行提供)段階 コードを書く作業
上位モデル(GPT-6 Astra・Claude Fable 5.1) ライセンスが必要 Copilot Chat と Word・Excel・PowerPoint のモデル選択。2026年11月上旬から中旬に展開(MC1519122)

これとは別に、Copilot Studio で作るエージェントにも Copilot Credits の単価表があります。こちらは次の節で扱います。

読者の会社で最初に起きるのは、たいてい2つです。社員が Copilot Chat でモデルを切り替えようとして「従量課金が有効になっていない」と表示されるか、情報システム担当が Cowork を試したくて支出ポリシーの作成を求めてくるか、のどちらかです。どちらも、支出ポリシーを1つ作るかどうかの判断から始まります。

1クレジット0.01ドルで何ができるか

単価は2種類の資料に分かれています。Copilot Studio の標準ハーネス(決められた手順どおりに動くエージェントの実行基盤)で作ったエージェントには、機能ごとの固定の単価表があります。Cowork や Work IQ API には固定の単価がなく、作業の重さで変わる目安だけが示されています。

Copilot Studio の標準ハーネスの単価は、Learn の「Billing rates and management」(2026年10月27日時点)で次のとおりです。

エージェントの機能 クレジット Microsoft 365 Copilot ライセンスを持つ社員が使う場合
定型の回答(Classic answer) 1 追加なし
生成した回答(Generative answer) 2 追加なし
エージェントの操作(Agent action) 5 追加なし。ただしコンピューター操作エージェントはライセンスに含まれない
テナント全体のデータをもとにした回答(Tenant graph grounding) 10 追加なし
エージェントフロー 100アクションごと 13 「エージェントがフローを呼ぶ」トリガーで動く場合だけ追加なし。他のトリガーで動くフローは全アクション課金
文書の読み取り(1ページ) 8 追加なし
推論モデルを使った処理 機能の単価に加えて、処理したトークン1,000あたり10(プロンプトキャッシュから読んだ入力分は数えない)

同じページの計算例では、テナント全体のデータを根拠付けに1回使い、生成した回答を1回返すと、10と2で12クレジットです。根拠付けと回答の回数が増えれば、その分だけ足し上がります。推論モデルを使うと、長い指示や大量のナレッジや長い会話で一気に増えます。Learn 自身が、1回の応答の中でモデルを何度も呼ぶので数件のメッセージで多くのクレジットを使うことがある、と注意しています。

「ライセンスを持つ社員が使う場合は追加なし」の条件は読み飛ばせません。Learn の脚注は、社員向けの使い方で、エージェントがライセンスを持つ本人の認証で動いている場合に限る、と書いています。公正利用の上限もあります。自動で起動するフロー、コンピューター操作エージェント、Microsoft Copilot ハーネスで作ったエージェントは、ライセンスがあってもクレジットを使います。Microsoft Copilot ハーネスは、複数手順の業務を自分で分解して進める実行基盤で、2026年10月28日に GitHub Copilot ハーネスから改名されました。

Cowork の目安は Copilot Credits Guide に図で示されています。軽い作業(少数の資料から要約を1つ作る)は100〜300クレジット、中くらいの作業(多くの資料から複数の成果物を作る)は300〜700、重い作業(長期間の資料を集めて分析する)は700超です。ガイドは「おおまかな計画用の見積もり」と書いています。費用を決める要素は、使うモデル、実行環境、文脈の読み込み、ツールの操作の4つです。

Work IQ API は、Tools API が1回の呼び出しで0.1クレジット、Chat と Context の API は根拠付け・検索・推論の量で変わります。ガイドの目安は、軽いタスクで15〜30、中くらいで30〜60、重いもので60〜100クレジットです。

買い方は3つです。

買い方 中身 注意点
従量課金(pay-as-you-go) 1クレジット0.01米ドル。月末に使った分を後払い。Azure サブスクリプションが必要 円の単価は日本の公式ページに記載がない
Copilot Studio の容量パック 25,000クレジットで月200米ドル。日本の公式ページでは月29,985円 余った分は翌月に繰り越さない
Copilot Credit 前払いプラン(P3) 年間前払いで5〜20%引き 1年の契約期間の終了時に失効し、購入後のキャンセルと交換はできない。超えた分は自動で従量課金

支払いの順番は、容量パック、次に前払いプラン、最後に従量課金です。容量パックは Microsoft 365 管理センター側と Power Platform 管理センター側で共有され、Power Platform 側で環境に割り当てた分は Cowork などに使える量から減ります。

円で見当をつけるなら、容量パックの29,985円を25,000で割った約1.2円が1クレジットの目安です。この換算は当社の試算で、従量課金の円単価は公式に示されていません。米国の容量パックは200ドルを25,000で割ると0.008ドルで、こちらは従量課金の0.01ドルより2割安い計算になります。

50人の会社で試算する3つの場面

ここからは当社の試算です。単価は上の公式の表、件数は仮定で、実際の請求額ではありません。社員50人、Microsoft 365 Copilot のライセンスは20人、残り30人はライセンスなしの会社を置きます。

試算1: Cowork を10人に使わせる。 10人が月に20回、中くらいの作業(1回500クレジットと仮定)を頼むと、10×20×500で100,000クレジット、従量課金で月1,000米ドルです。1人あたり100米ドルで、ライセンス料の21米ドル(Copilot Business の年払い)より大きくなります。Cowork は重い処理の代行なので、1人あたりの費用がライセンスより高くなること自体は想定どおりです。問題は、誰が月に何回使うかを決めずに全員をポリシーに入れることです。

試算2: 社内の問い合わせエージェントをライセンスなしの30人に使わせる。 Copilot Studio の標準ハーネスで作ったエージェントが、社内資料の根拠付け1回と生成回答1回で答えると12クレジットです。30人が1日5回、月22日使うと、30×5×12×22で39,600クレジット、月396米ドルです。ライセンスを持つ20人の分は追加なしです。同じ金額で Copilot Business のライセンスを買うと約19人分なので、この使い方ならエージェントだけ使わせるほうが安く済みます。

試算3: Work IQ API で作った社内アプリをライセンスなしの30人に使わせる。 中くらいのタスクを1回45クレジットと置き、30人が1日3回、月22日使うと、30×3×45×22で89,100クレジット、月891米ドルです。30人分の Copilot Business のライセンスは月630米ドルです。ライセンスを買っても API の利用料は免除されないので、比べる相手は「ライセンスを買い、同じ仕事を Copilot Chat や付属のエージェントでさせる」設計です。この頻度なら、そちらのほうが安くなります。

試算3から損益の分かれ目が計算できます。Copilot Business の21米ドルは2,100クレジット分です。中くらいのタスクを45クレジットとすると約46.7回、月22営業日なら1日2回強で並びます。つまり、1人が月に47回より多くその仕組みを使うなら、ライセンスを買って Copilot 本体に同じ仕事をさせます。月に数回しか使わない人には、エージェントだけを使わせます。

もう1つ、上限の数字も計算しておきます。12月1日以降に販売店経由で Copilot Business を新しく買うと、1人あたり月4,000クレジットが初期値の上限です。50人なら200,000クレジット、月2,000米ドルが上限になります。これは天井で、使わなければ請求はありません。ただし、天井がライセンス料の総額(50人×21米ドル=1,050米ドル)より高いことは、承認する側が知っておく数字です。

止まる仕組みと、知らせるだけの仕組みを分ける

経営者が最初に確認するのは、上限に達したときに本当に止まるのかどうかです。Microsoft の仕組みは、止まるものと知らせるだけのものに分かれます。

止まるもの: Microsoft 365 管理センターの支出ポリシー。 Copilot の費用管理画面で、全社か特定のグループを対象に、そのポリシーの月の上限と1人あたりの上限、通知のしきい値、請求先を決めます。ポリシーは複数作れ、上限はポリシーごとに独立です。利用者が上限に達すると、その月は対象のサービスが使えなくなり、翌月1日に戻ります。1人あたりの上限を設定するなら最低2,000クレジットです。複数のポリシーに入っている人には、1人あたりの上限が最も大きいポリシーが適用されます。ポリシーの作成は全体管理者と課金管理者だけで、AI管理者とライセンス管理者は編集まで、経理には読み取り専用の役割を渡せます。

止まるもの: Power Platform 管理センターのエージェントごとの上限。 Copilot Studio のエージェントには月の上限を設定でき、通知と自動停止ができます。ただし Learn は、上限は即時には適用されない、と書いています。エージェントの上限は、そのエージェントが呼ぶフローを止めません。

止まるもの: 前払い容量の使い切り。 前払い容量だけで運用しているテナントでは、容量の125%に達すると独自のエージェントが止まります。実行中の会話は最後まで続き、環境に容量を割り当てたエージェントは、その割り当てが残っている限り止まりません。止まった後の利用者には「このエージェントは現在利用できません。使用量の上限に達しました」と表示されます。エージェントフローは100%で新しい実行が止まります。Azure の従量課金につないだ環境は止まらず、超えた分が請求されます。

知らせるだけのもの: Azure Cost Management の予算。 Learn は、予算はリソースに影響せず消費も止まらない、と明記しています。Azure の予算を設定したから安心、は成り立ちません。

ここに2つの初期設定が重なります。1つは「新しいサービスを自動で適用する」設定で、支出ポリシーを作るとデフォルトでオンです。オンのままだと、今後 Microsoft が従量課金の対象に加えるサービスが、見直しなしにそのポリシーの対象になります。Learn は、将来のサービスを自動で含めたくないポリシーではこの設定をオフにするよう書いています。もう1つは Cowork の扱いです。Learn の Cowork 管理ページは、支出ポリシーは予算であるだけでなくアクセス制御だ、と明記しています。Cowork を選んだポリシーの対象に入っている人は誰でも Cowork を使えます。使わせたくない人は、Cowork を選んだどのポリシーにも入れません。上限を下げても使えてしまいます。

12月1日から、販売店経由の新規購入は従量課金が最初から有効になる

Partner Center の2026年10月の告知と Learn の説明(2026年10月9日時点)に、この変更が書かれています。2026年12月1日から、販売パートナー(CSP)経由で新しく買う Copilot Business には、従量課金が最初から有効になります。当初は11月2日の予定でしたが、12月1日に変わりました。

対象は Copilot Business の新規購入と、Business Basic や Business Standard とのセット商品、Partner Center の画面での席の追加、試用から有料への切り替えです。大企業向けの Microsoft 365 Copilot、教育、非営利、米国政府向けは対象外です。購入と同時に Azure プラン、サブスクリプション、リソースグループ、初期の支出ポリシーが自動で作られます。すでに Azure プランがあれば再利用され、支出ポリシーや課金ポリシーが既にある顧客には重複して作られません。対象のサービスは Cowork、Work IQ API、GitHub Copilot ハーネス(現在の名前は Microsoft Copilot ハーネス)で、今後増えると書かれています。

初期値は、1人あたり月4,000クレジット、初期の支出ポリシー全体で月1,200,000クレジットです。Learn は例として、100人の Copilot Business の顧客なら月に最大400,000クレジットを消費しうる、と書いています。請求は Azure の利用料と同じ明細に、Copilot の席料とは別の行で載ります。

当初の除外国はオーストラリア、ベルギー、ブラジル、フランス、ドイツ、インド、イタリア、韓国、オランダ、ポーランド、スペインで、日本は入っていません。ただし対象の市場の一覧は公表されておらず、日本で12月1日から始まるかは確認できていません。

止め方については、同じ Learn のページに2つの書き方があります。1つは、従量課金は設定後に完全にはオフにできないので、販売パートナーは上限を0にして以後の支出を止める、とあります。もう1つは、ポリシーの上限はプラットフォームの最低値より下げられず、支出を完全に止めるにはポリシーを削除するしかない、とあります。ページ自体が、まだ提供されていない機能について書いていると断っています。12月以降に実際の画面で確かめるまで、販売店には「上限を下げる」と「ポリシーを外す」の両方を依頼できるようにしておくのが無難です。

同じ12月1日に、Copilot をベースの Microsoft 365 契約なしで買える新しい商品も出ます。価格は同じで製品IDが別です。既存の商品は10月16日から名前に「(add-on)」が付きました。Copilot Business の年払い月額は21米ドル、日本の公式ページでは3,148円で、既存の Microsoft 365 顧客の初年度に限り2026年12月31日まで2,698円です。大企業向けは年払い月額4,497円です。2026年7月1日の Microsoft 365 の値上げに Copilot の商品は含まれていません。

ライセンスの無い社員にエージェントだけ使わせる設計

従量課金が出てきたことで、全員にライセンスを配る以外の設計が現実になりました。2つの経路があります。

1つ目は、Copilot Studio の標準ハーネスで作ったエージェントを Teams や社内ポータルに置き、ライセンスの無い社員が使った分を容量パックか従量課金で払う経路です。Microsoft Q&A には2026年5月29日に、社内ポータルの SharePoint ベースのエージェントをライセンスの無い社員にも使わせたい、との相談があります。質問者が採用した回答は「容量パックを買い、Teams などのチャネルに公開する」でした。一方で、AI による回答は従量課金と Azure が必須だと答えており、同じ質問に対する説明が割れています。単価は上の表のとおりで、試算2のように使い方が軽ければライセンスより安く収まります。

2つ目は、Work IQ API です。Learn の説明(2026年8月20日時点)では、自社のアプリやエージェントから、Microsoft 365 のデータを既存の権限を保ったまま推論に使えます。対象はメール、会議、OneDrive と SharePoint の文書、Teams のメッセージ、人と組織の情報、Planner です。接続の方法は A2A(エージェント間の委任)、MCP(AIアシスタントのツールとして呼ぶ)、REST の3つです。認証は Entra ID の委任認証だけで、サインインした利用者の権限で動き、アプリ単独の認証は使えません。つまり、本人が見られない情報は API 経由でも見えません。

Work IQ API の利用はライセンスに含まれないので、呼び出した分だけ Copilot Credits で払います。Copilot Credits Guide は次のように書き分けています。Microsoft 365 Copilot 自体は Work IQ の上に作られているので、Copilot Chat や Word・Excel・PowerPoint の Copilot、Researcher・Analyst・Facilitator が Work IQ を使う分には追加の料金がありません。課金されるのは、自社で作ったものが API を通じて Work IQ にアクセスする場合だけです。前提は、テナントで Work IQ を有効にすることと、Copilot Credits の従量課金を有効にすることの2つです。

Microsoft 365 Copilot のリリースノート(2026年10月27日)には、Work IQ API の使用量課金として、事前にライセンスを割り当てていない利用者でもエージェントやモデルをリクエスト単位の課金で呼べる、との項目が載りました。経営者の判断としては、試算3で出した線(月47回、1営業日2回強より多く使う人にはライセンス)を持ちます。そのうえで、月に数回しか使わない部署や、外部の協力会社の担当者が使う社内アプリには、API の経路を使います。

前払いか従量か。順番は、従量で実績を取ってから前払い

Microsoft 自身が、従量課金の用途の1つに使用パターンの把握を挙げています。容量パックは余っても翌月に繰り越さず、前払いプランは1年の契約期間の終了時に失効してキャンセルもできないので、使う量が読めないうちに前払いを選ぶと、余らせるか足りなくなるかのどちらかになります。最初の数か月は従量課金で実績を取り、月ごとの消費が安定してから容量パックか前払いプランを検討する順番が、仕組みに合っています。

実績を見る場所は増えました。Microsoft 365 管理センターの費用管理には、支出ポリシー、利用者、グループ、エージェント、サービス、支払い元ごとの消費を見る画面があります。利用者本人がクレジットの使用量、残り、履歴を見る機能は2026年9月に一般提供されました。Viva Insights の Copilot Analytics には2026年10月6日に、Cowork の導入と効果の指標と、クレジットの使用量を含む消費のクエリが加わりました。2026年9月23日には GitHub Copilot のAI費用のダッシュボードも載りました。Microsoft Graph の Copilot Cost Management API からは、支出ポリシーの管理と使用量の取得ができます(金額や請求書は含みません)。

比較のために他社の動きを1つだけ挙げます。2026年10月30日の報道では、ChatGPT の Pro と Business のプランに月最大500米ドル分の API 利用枠が付くようになりました。定額のプランに従量の枠を抱き合わせる設計は Microsoft 以外にも広がり、AI の契約全般が「定額+使った分」へ動いています。

経営者が決める5つ

情報システム担当に任せきりにせず、経営者が決める項目は5つです。

  1. 誰に Cowork と上位モデルを使わせるか。 支出ポリシーは使ってよい人の指定を兼ねます。最初は部署か役割で絞り、月に何回使うかの見込みを本人に書かせます。
  2. 1人あたりの月の上限。 最低2,000クレジットから設定できます。試算1のように1回500クレジットの作業なら、2,000は月4回分です。多いか少ないかは、1の見込みから決めます。
  3. ポリシー全体の月の上限。 1人あたりの上限に人数を掛けた値ではなく、今月の予算として承認できる額から逆算します。ポリシーを複数作るなら、上限はそれぞれ独立なので合計を見ます。
  4. 通知の宛先と、しきい値。 管理者だけでなく、予算を持つ責任者を宛先に入れます。しきい値は上限の70%前後に置き、月の途中で増額するか止めるかを判断できる時間を残します。
  5. 「新しいサービスを自動で適用する」をオフにするか。 オンのままだと、今後追加される有料機能が審査なしに対象になります。最初の数か月は、オフにして追加のたびに見るほうが、何にいくら使っているかが分かります。

稟議の書き方としては、月の上限額と対象者、通知の宛先、見直しの時期(Ignite 2026 の後の12月と、2027年1月の初回請求の後)を1枚にまとめれば足ります。Microsoft Ignite は2026年11月17日から20日にサンフランシスコで開かれます。発表の中身は公表されていないので、ここでは予測を書きません。料金と管理機能に変更があれば、12月の見直しで反映します。

注意点

  • 1人あたり4,000クレジットは上限で、毎月40米ドルが請求される意味ではありません。
  • 12月1日の変更は販売店経由の Copilot Business の新規購入などが対象です。大企業向けのテナントでは、管理者が支出ポリシーを作るまで従量課金の機能は動きません。
  • 「ライセンスがあればエージェントは全部無料」ではありません。無料なのは、社員向けで Microsoft のチャネル内、本人の認証で動くものです。自動で起動するフロー、コンピューター操作、Microsoft Copilot ハーネス、Work IQ API、Cowork はクレジットを使います。
  • 推論モデルの単価は、2026年10月時点の Learn では機能の単価に1,000トークンあたり10クレジットを加える方式です。古い解説記事にある「1応答100クレジット」などの固定の数字は、現在の単価表と合いません。
  • Cowork を使う前提に「テナントで Anthropic のモデルが有効であること」を挙げる資料があります。一方で、Anthropic をオフにしても Cowork は使えると書く Learn のページもあります。Learn の Cowork 管理ページは、モデルの設定とアクセスは別で、Anthropic をオフにしても GPT 系のモデルで動く、と説明しています。自社の管理画面で確かめてください。
  • 従量課金の円単価は公式に示されていません。請求は米ドル建ての単価をもとに計算されるので、為替で月の額が動きます。
  • Reddit などで「エージェント1つで数万ドルの請求が来た」との話が引用されますが、元の投稿を確認できませんでした。この記事では使っていません。上限の仕組みを設定していれば、ポリシーの上限で止まります。

KOIYALの見解

Copilot Credits の話は、料金の話に見えて、実際には「誰にどの仕事を任せるか」を決める話です。Cowork に1回500クレジットの作業を月20回頼む人は、月に20回、複数の資料から成果物を作る仕事を持っている人です。その人が社内に何人いるかを経営者が言えないと、上限は決められません。逆に、それが言えれば上限はほぼ自動で決まります。

当社は、支出ポリシーを「仕事の割り当て表」として作ることを勧めています。予算の上限として作ると、数字だけが先に決まって対象者が後回しになります。最初のポリシーの対象は、重い処理を実際に抱えている数人に絞り、その人たちの月の消費と成果物を2か月見てから広げます。従量課金を全社で一斉に有効にして、後から使用量の多い人を探す順番にすると、止める判断が遅れます。

12月1日の変更で、販売店経由で新しく Copilot Business を買う会社は、何もしなくても従量課金が有効な状態で始まります。これは Microsoft と販売店にとっての手間の削減ですが、買う側にとっては、上限の初期値を自分で見直す義務が増えたことを意味します。購入時に販売店へ「1人あたりの上限と全体の上限を、自社の数字に変えてほしい」と言えるように、上の5つを先に決めておいてください。

次の行動

  1. 自社の契約の経路を確認する。 Microsoft から直接か、販売店(CSP)経由か。CSP 経由で12月以降に Copilot Business を新しく買う、または席を買い足す予定があるなら、まだ支出ポリシーが無い会社には初期値(1人4,000クレジット、ポリシー全体1,200,000クレジット)のポリシーが作られます。それをどう変えるかを先に決めます。
  2. 重い処理を抱えている人を数える。 複数の資料から成果物を作る仕事を月に何回しているかを、部署ごとに聞き取ります。その人数と回数が、Cowork のポリシーの対象と上限になります。
  3. 支出ポリシーを1つだけ作る。 対象は2で数えた人、1人あたりの上限と全体の上限は試算で決め、通知の宛先に予算の責任者を入れ、「新しいサービスを自動で適用する」はオフにします。2か月後に消費と成果物を見て広げるか決めます。

上限の数字と対象者を、自社の人数と業務で1回の打ち合わせで決めたい会社には、AI・DXコンサルティングで支出ポリシーの表の叩き台を一緒に作ります。お問い合わせの本文に、Copilot のライセンス数と契約の経路(直接か販売店か)を書いていただければ、初回の前に試算の表を用意します。

参考