Copilotで、自社の業務アプリを社員が作れるようになるらしい。そう聞いた経営者が、次に考えるのはこれです。自社でも、できるのか。できるとして、何から手を付けるのか。

2026年9月25日、MicrosoftはCopilotをHome、Code、Autopilotの3つで作り直すと発表しました。Codeは、言葉で説明するとアプリやダッシュボードができる機能です。10月に入ると、CEOのNadella氏が「The Infinite SaaS Factory」という題の投稿で、この先の絵を描きました。ソフトに合わせて働くのをやめ、仕事に合わせてソフトを作る。Copilotを仕事のOSにする。各社が自社に要るソフトの部品を、自分で作る。

この記事は、その発表と投稿を、従業員が数十人から百人台の会社の経営者の目で読み直します。結論を先に書きます。

  1. この流れは、インハウス経営の追い風です。 インハウス経営(AIを活用し、自社で業務を改善し、自社で仕組みをつくる経営)の到達点は、自社の業務データの大もとの上に、社員が自社専用の仕組みを作って回すことです。Microsoftが描く絵は、その到達点と重なります
  2. ただし、工場は道具だけでは動きません。 図面、倉庫、工場長が要ります。業務の分解、データの大もと、枠を決める人の3つです。この3つが曖昧なままだと、何を作るか、どのデータを読むか、いくら使うかの判断が、作る担当者の手元に落ちます
  3. 3つは、Copilotの機能が自社に届く前に用意できます。 どれも、今のExcelとSharePointと会議で始められます。最初の1周は外の力を借りてよく、自社で続けられる手順を残す形にします

確認日は2026年10月13日です。提供段階は早く変わるので、発表の中身の表は発表時点の予定として書き、確認日を添えました。

9月25日に発表された3つ

Microsoftの公式ブログ(2026年9月25日・Jared Spataro氏)が書いていることを、まず確かめます。

2026年9月25日の発表でCopilotに加わるHome、Code、Autopilot、Managed Runtimeの4つについて、何をするものか、提供の段階、課金の区分を並べた表

名前 何をするか 9月25日の発表時点の提供予定 課金の区分
Home ChatとCoworkを1つの画面にまとめる。短い質問はChat、任せる仕事はCoworkが最後まで進めて結果を返す。Chat、Cowork、Codeのどれに送るかを自動で振り分ける機能は今後 Frontierプログラムで数週間のうちに順次 Chatは契約の範囲。Coworkは従量課金
Code 言葉で説明すると、アプリ、ダッシュボード、自動化を作る。GitHub Copilotと同じ技術。サンドボックスで動き、自社のテナントの中に置ける 2026年9月末にFrontierへ、その後数週間で広く提供の予定。Microsoft 365 PremiumとProの契約者には年内にプレビューの予定 従量課金
Autopilot 名前と役割と目標を与えると、指示を待たずに繰り返しの仕事を続けるエージェント。以前のScout。自社のテナントの中に、自分のID、記憶、計算機、作業場所を持つ 2026年9月末にプライベートプレビューへ拡大の予定 従量課金
Copilot Managed Runtime Copilotが作ったコードを、自社のMicrosoft 365の環境の中で動かすための基盤。ITが管理し、作ったアプリは管理センターの一覧に出る プレビュー(Microsoft Learnのページには公開プレビューと明記) 作る側と動かす側で別の従量課金

発表文には、課金の考え方も書かれています。Chatや、Word、Excel、PowerPoint、Outlook、Teamsの中の日常のAIは、ユーザーごとの契約(USL)の範囲です。Cowork、Code、Autopilot、最上位のモデルを使う仕事は、その契約を土台にして、Copilot Creditsによる従量課金(UBB)が加わります。従量課金の機能を使うにも、ユーザーごとの契約が要ります。Microsoft 365の管理者は、どのグループにどのモデルを使わせるかを決め、支出の方針をAPIで一括で管理し、利用枠の申請を承認の流れに乗せられる、とあります。Tech Communityの課金の説明(2026年9月25日)には、企業向けの従量課金は管理者がMicrosoft 365管理センターで支出の方針を作るまで無効のまま、とあります。

Managed Runtimeについては、Microsoft Learnのページ(2026年9月25日付・プレビュー)に、もう少し具体があります。作り方は3つで、Coworkの会話の中で頼む(Frontierプログラムへの参加が要る)、Copilot Studioの「Apps」で作る(プレビューの設定を有効にする)、開発者向けのSDKとCLIで作る。どの作り方でも、できたアプリは自社のデフォルトの管理方針(許可されたコネクタ、共有ルール、コンテンツセキュリティポリシー)を引き継ぎ、Microsoft 365管理センターの「Apps」の「All apps」に並びます。使う人は専用のポータルで自分が使えるアプリを開きます。課金は、作る側と動かす側で別です。管理者向けのページ(2026年10月7日付)によると、作るときはCoworkかCopilot Studioの側の従量課金、動かすときは管理センターで別に決める利用者ごとの支出の方針に従います。Copilot Studioのブログは、この基盤の考え方を一文で書いています。Microsoftが基盤を運用し、組織がどこまで許すかを決め、組織が主導権を持つ。

ここまでが、発表で確かめられたことです。日本語の提供時期と、各国のテナントでの順番は、確認した範囲の文書には書かれていません。Power Platformの既存の仕組みとの関係は、ライセンスの面では記載があり、後の注意点に書きます。

Nadella氏の投稿が描いていること

Nadella氏の投稿は、X(とLinkedIn)に出た長い文章です。当社が本文を読んで整理した要旨は、次の4つです。

ソフトに仕事を合わせるのをやめる。 これまでは、SaaSの画面に合わせて人が手順を変えてきました。AIがその向きを逆にする。仕事の形に合わせてソフトの側が変わる。これを、Copilotを「仕事の新しいOS」にする、と言っています。

記録の大もとは、むしろ重要になる。 エージェントが増えるほど、CRMやERPのような、情報を管理し変更を調整する場所の重みが増す、と書いています。アプリの中に閉じ込められた業務の決まりと文脈を、エージェントが使える形で開く層を「首なし(headless)」と呼び、Copilotとその層をMicrosoft IQがつなぐ、という構図です。投稿では、Dynamics 365の30以上のCopilotのスキルや、Codeで作った部品からDataverseの定義を広げることも取り上げられています。

自社に要るSaaSの部品を、自分で作る。 Copilot Codeに言葉で要る機能を説明すると、自社向けの機能や新しいSaaSの部品ができる。それを自社の環境でITが管理して動かすのがManaged Runtime。ここが「無限のSaaS工場」という題の意味です。

すべてをLLMにやらせない。 知能が価値を足すところにだけトークンを使い、実行は既存の、速くて安くて確かなソフトに任せる。この考え方は、当社が自社の仕組みで守っている原則と重なります。判断と文章はモデル、決まった処理はスクリプト。

この投稿を、Microsoftへの依存が深まる話、と読むこともできます。当社は、インハウス経営の追い風、と読みます。理由は、描かれている到達点が、自社のデータと業務の大もとを基盤にして、自社の社員が自社に合う仕組みを作る、という形だからです。合わないと思いながら使っていたSaaSの代わりに、自社専用の仕組みで仕事をする。それは、外注に頼るしかなかった部分を自社でできるようにする、という当社の言うインハウス経営の中身そのものです。道具がMicrosoftであることは、工場の機械がどこ製か、という話です。問題は、工場を動かす側に何があるかです。

工場に要るもの。図面、倉庫、工場長

工場という例えを、もう少し続けます。機械が入っても、何を作るかを示す図面が無ければ動きません。材料を置く倉庫が散らかっていれば、同じ部品を二度作ります。誰が機械を使ってよいか、1日にいくらまで材料を使ってよいかを決める工場長がいなければ、現場は止まるか、暴走します。

Copilotの工場に当てはめると、3つになります。

Copilotの機能が自社に届く前に、会社が自分で積んでおく4段の図。業務の分解、データの大もと、枠を決める人、その上に自社専用の仕組みが乗る

図面は、業務の分解です。 業務名のままでは、Codeに何を頼むかが決まりません。週次の売上報告、という名前では作れません。販売管理から先週の数字を取り出す、前週と比べる、差の理由を一言書く、担当に送る、と割ると、どれを仕組みに渡し、どれを人に残すかが見えます。分解の進め方は業務を分解してAIに渡す記事に書きました。Codeで作るものは、分解した作業のうち、決まった手順で繰り返すものです。

倉庫は、データの大もとです。 顧客の一覧、商品の一覧、価格、承認の順番。これが、販売管理と、Excelと、個人のメールに散らばっていて、どれを更新元にするかが決まっていないと、作ったアプリはその時に見つかった方を読みます。Nadella氏の投稿が記録の大もとの重みを強調しているのは、ここです。自社で作る仕組みが増えるほど、更新元が決まっていないことの害が増えます。社員が作ったアプリの中にデータが閉じ込められる、という新しい散らかり方も加わります。

工場長は、枠を決める人です。 誰がCodeでアプリを作ってよいか。作ったものをどこに置くか。どの接続先を許すか。1か月にいくらまで従量課金を使ってよいか。発表文は、管理者が支出の方針を決め、申請を承認に乗せられる、と書いています。つまり、決める人がいる前提です。決める人がいない会社では、初期設定がそのまま会社の方針になります。

この3つは、Copilotの機能ではありません。会社の側の準備です。だから、機能が自社に届く前に始められます。

自社専用の仕組みが生まれて、直るまで

3つが揃った会社で、1つの仕組みができて回り始めるまでの流れを書きます。

自社専用の仕組みが生まれて直るまでの流れ。現場が業務を分解し、情報システムがデータの大もとと保存先を決め、経営が枠を決め、現場がCodeで作り、使って大もとに戻す。3つのレーンで示す

現場の担当者が、毎週同じ手順で作っている報告を1つ選び、作業に分解します。情報システムの担当者が、その作業が読むデータの大もとがどこにあるかを確かめ、無ければ決めます。SharePointのリストか、Dataverseか、販売管理の出力か。経営が、この1件について、作ってよい人、置く場所、使ってよい従量課金の枠を決めます。現場の担当者が、Codeに言葉で頼んで作ります。できたものはManaged Runtimeの上で動き、管理センターの一覧に出ます。使ってみて、足りない点が出たら、アプリを直す前に、大もとの側に不足が無いかを見ます。大もとに無い項目をアプリの中だけで足すと、次に作る人が同じ項目をもう一度作ります。

この流れで、着手の前に人が決める主な所は3か所です。何を分解するか、データの大もとをどこにするか、枠をどうするか。できた後も、結果を見て使い続けるかを決めるのは人です。Copilotが担うのは、作る所と動かす所です。発表文がAutopilotについて、目標と、どこまで任せるかは人が決める、と書いているのと同じ分担です。

Codeで作ってよいもの、まだ作らないもの

作れるようになった後に、現場から依頼が増えます。全部に応えると、データの大もとが散らかります。当社は、2つの軸で仕分けます。

Copilot Codeで作ってよいかを2軸で分ける図。横軸は読むデータの大もとが決まっているか、縦軸は間違ったときに取り返しがつくか

横軸は、そのアプリが読むデータの大もとが決まっているか。縦軸は、アプリが間違った結果を出したときに、取り返しがつくか。

  • 大もとがあり、取り返しがつく。 作ります。社内の報告のダッシュボード、進捗の一覧、問い合わせの仕分け。間違いは人が見て直せます
  • 大もとがあり、取り返しがつかない。 作りますが、実行の前に人の承認を挟みます。顧客への請求、発注、外部への送信。発表文にある承認の流れは利用枠の追加申請の話なので、業務の処理の承認は、それとは別に自社で用意します
  • 大もとが無く、取り返しがつく。 先に大もとを決めます。アプリを作ると、アプリの中が大もとになってしまいます
  • 大もとが無く、取り返しがつかない。 作りません。作る前に、大もとと承認の両方を整えます

この仕分けは、情報システムの担当者が下書きを作り、取り返しがつくかどうかを現場と経営が確かめる、という分担で埋められます。現場に見せると、依頼の書き方が変わります。大もとはここです、間違っても戻せます、と書いてくる依頼は、通りやすい依頼です。

今のExcelとSharePointで始める3つ

Copilotの機能が届くのを待たずに、今週から始められる形で書きます。

業務の分解は、1つの報告から。 毎週か毎月、同じ手順で作っている報告を1つ選びます。作っている本人に、手順を上から順に書き出してもらいます。読むファイル、開く画面、書く項目、送る相手。この書き出しがそのまま、Codeに渡す依頼の下書きになります。1件できたら、同じ型で2件目を書きます。

データの大もとは、一覧表を1枚作るところから。 顧客、商品、価格、承認者、のように、複数の業務で使う情報の種類を縦に並べ、今どこにあるかを横に書きます。販売管理、Excel、メール、個人の頭の中。1つの種類が2か所以上にあり、どれを更新元にするかが決まっていない行が、最初に直す所です。直し方は、どちらかを更新元と決め、もう一方を参照に変えることです。アプリが読む先も、その更新元に合わせます。SharePointのリストにまとめるのか、販売管理の出力を正にするのかは、この表を見てから決めます。

枠は、3つの問いに答えるところから。 誰が作ってよいか。どこに置くか。月にいくらまでか。最初は、作ってよい人を2人、置く場所を1つ、枠を小さく、と決めて始めます。発表文によると、管理者は利用枠の申請を承認の流れに乗せられるので、枠を超える依頼は承認で受ける形にします。枠を決めるのは経営の仕事で、情報システムに任せる仕事ではありません。

3つとも、1周目は時間がかかります。業務の分解は、本人が自分の手順を言葉にできないところで止まります。大もとの表は、どこにあるか誰も知らない行で止まります。当社が研修とコンサルティングで入るのは、この最初の導入です。自社で続けられる手順を残し、支援の範囲は業務と担当者の習熟に合わせて決めます。

注意点

提供段階は、9月25日の発表時点の予定です。 HomeとCodeはFrontierプログラムから、Autopilotはプライベートプレビューから、と発表されました。予定どおりに進んだかは、この記事では確かめていません。Managed RuntimeはMicrosoft Learnのページにプレビューと書かれています。自社のテナントでいつ使えるかは、Microsoft 365管理センターのメッセージセンターと、各ページの最新の記載で確かめてください。

従量課金は、管理者が支出の方針を作って有効にします。 Cowork、Code、Autopilotは従量課金の区分です。Tech Communityの課金の説明によると、企業向けの従量課金は、管理者が管理センターで支出の方針を作るまで無効のままです。有効にするときに、テナントとグループの予算と、利用者ごとの上限を決めます。単価と計算の単位は、契約の文書で確かめてください。

Managed Runtimeは、作るときと動かすときで課金が別です。 管理者向けのMicrosoft Learnのページ(2026年10月7日付)によると、作るときはCoworkかCopilot Studioの側の従量課金で、動かすときは管理センターで別に決める利用者ごとの支出の方針に従います。Power Apps Premiumの契約者は、動かすときにCopilot Creditsを原則として消費しませんが、別料金のサービスを使う場合とAPI要求の上限を超えた場合は除かれ、作るときの課金は別に発生します。

作ったアプリは、自社の管理センターの一覧で確認できます。 Managed Runtimeで作ったアプリは、どの作り方でも管理センターの「All apps」に並びます。並ぶだけでは管理になりません。誰が何を作ったかを、月に1回は見る人を決めます。

Nadella氏の投稿は、Microsoftの製品の方向を示す文章です。 製品の仕様書ではありません。投稿に出てくる言葉のうち、Managed Runtimeは製品の文書がある段階、Microsoft IQとDynamics 365のスキルは発表の段階で、提供の状況はそれぞれの製品の文書で確かめる必要があります。「仕事のOS」「無限のSaaS工場」は考え方を示す言葉です。自社の計画には、製品の文書に書かれている範囲を使ってください。

既存のPower Platformとの使い分けは、確認した範囲の文書に指針がありません。 ライセンスの面では、上に書いたPower Apps Premiumの扱いがあります。ただ、Power AppsやPower Automateで作ってきたもののうち何をCodeで作り直すべきか、という指針は見つけられませんでした。既にPower Platformで作ったものがある会社は、置き換えを急がず、新しく作るものから試す順を勧めます。

KOIYALの見解

Nadella氏の投稿を、当社はインハウス経営の追い風と読みます。自社のデータと業務の大もとの上に、社員が自社に合う仕組みを作る。合わないSaaSに合わせて働くのをやめる。これは、当社が会社の旗にしている方向と同じです。

同時に、工場は道具では動かない、とも思います。発表された機能は、作る所と動かす所を担います。何を作るかを決める図面、材料を置く倉庫、枠を決める工場長は、自社にしか用意できません。この3つが曖昧なまま機能だけが届くと、何を作るか、どのデータを読むか、いくら使うかの判断が、作る担当者の手元に落ちます。まず1件を選んで、3つを整えてから作ることを勧めます。

当社の関わり方は、最初の導入です。最初の報告を分解し、大もとの表を作り、枠を決める所までを、研修とコンサルティングで一緒にやります。分解の型と大もとの表と枠の決め方を自社に残し、自社で続けられる手順にします。支援の範囲は、業務と担当者の習熟に合わせて決めます。読者の会社が自社でできるようになるのは、新しい依頼が来たときに、大もとはどこか、取り返しがつくか、枠の中か、の3つで自分たちで仕分けることです。それができる会社は、工場の機械がCopilotでも、別の道具でも、動かせます。

次の行動

  1. 毎週か毎月、同じ手順で作っている報告を1つ選び、作っている本人に手順を上から順に書き出してもらう
  2. 顧客、商品、価格、承認者のような共通の情報が、今どこにあるかを1枚の表にする。2か所以上にある行を見つける
  3. 作ってよい人、置く場所、月の枠の3つを、経営が仮に決める。Copilotの機能が届いたら、その枠の中で1件だけ作る

1周目を一緒に回すこともできます。AI・DXコンサルティングでは、最初の報告の分解と大もとの表づくりを、現場と情報システムと経営の3者と一緒に進め、自社で続ける進め方を残します。お問い合わせの本文に、毎週作っている報告を1つ書いていただければ、分解の下書きから始められます。去年、AIがなくても解決したかった問題は何でしたかという質問から入る理由も、合わせてお読みください。

参考