Power Automate のライセンスは、2026 年に入って読み解きにくくなりました。Microsoft 365 に付属する権利で動く自動化、Premium を買わないと動かない自動化、Copilot Studio のクレジットで動くエージェントフローが 1 つの画面に並び、同じフローでも誰が所有して誰が実行するかで必要なライセンスが変わります。さらに 11 月には、AI Builder クレジットの終了、Dataverse for Teams の新規作成終了、説明文からフローを作る機能の終了が重なります。

この記事は、30 人から 300 人の会社で Power Automate を使っている、またはこれから使う情報システム担当と業務部門のリーダーに向けて、2026 年 10 月 30 日時点の公式資料で全体像を整理します。どの自動化が付属の権利で足り、どこから Premium か従量課金が要り、どの処理をエージェントフローに渡すべきかを、申請・請求書・日報・在庫の 4 つの例で見ていきます。

結論を先に書きます。

  1. 自動化は 3 層で考えます。 Microsoft 365 付属で動く層(標準コネクタだけ)、Premium か従量課金が要る層(プレミアムコネクタ、オンプレミスのデータ、RPA、AI Builder)、Copilot Studio のクレジットで動くエージェントフローの層です。費用の桁と止まり方が層ごとに違います。
  2. Premium が要るのは「誰か」で決まります。 自動フローとスケジュールフローは所有者 1 人に Premium があれば動き、ボタンで動かすフローにプレミアムコネクタが入っていれば実行する全員に要ります。共有アカウントに 1 本だけ付けて大勢で使う運用はライセンス違反です。
  3. 従量課金は月 25 回が分かれ目です。 プレミアムのフローは 1 回 0.60 米ドル、標準コネクタだけのフローは何回動いても無料です。所有者 1 人のフローなら月 25 回で Premium(15 米ドル、日本では税抜 2,248 円)と同額になり、26 回以上なら Premium のほうが安くなります。
  4. 11 月に 3 つ変わります。 11 月 1 日に AI Builder クレジットの提供が終わり、手元のクレジットを使い切ったあとや新しく契約するライセンスでは、請求書の読み取りなどを Copilot Credits で払う形になります。11 月 15 日に Dataverse for Teams と管理されていない開発者環境が新しく作れなくなります。11 月 30 日に説明文からフローを作る機能が終わり、フローを作る AI はデザイナーの中と、Claude Code や GitHub Copilot CLI のプラグインに移ります。

付属・Premium・エージェントフローの 3 層

Power Automate の料金を 1 本の表で覚えようとすると混乱します。層に分けると見通しが立ちます。

1 層目は Microsoft 365 付属の権利です。 Business Standard や E3 などの Microsoft 365 ライセンスには Power Automate の利用権が付いていて、自動フロー、スケジュールフロー、ボタンフローのどれも作れます。使えるのは標準コネクタだけです。SharePoint、OneDrive、Outlook、Teams、Forms、Excel Online、Planner、Approvals(承認)といった Microsoft 365 の中で完結する部品はここに入ります。カスタムコネクタ、オンプレミスデータゲートウェイ、業務プロセスフロー、無人 RPA、AI Builder の容量は含まれません。

2 層目は Premium と Process です。 プレミアムコネクタ(SQL Server、Dataverse、HTTP、Salesforce、kintone など Microsoft 365 の外に出る接続のほとんど)、オンプレミスのデータベースへのゲートウェイ、有人 RPA、AI Builder を使うなら、所有者か実行者に Premium が要ります。1 人 1 か月 15 米ドルで、Microsoft の日本語ページでは税抜 2,248 円(年払い)です。特定のフローに専用の容量を持たせるなら Process ライセンスで、1 ボット 1 か月 150 米ドル、税抜 22,488 円です。Microsoft がホストする仮想マシンつきの Hosted Process は 215 米ドル、税抜 32,233 円です。ライセンスを買う代わりに、動いた回数で払う従量課金もこの層に属します。

3 層目はエージェントフローです。 Copilot Studio の中で作る、ルールどおりに動くフローで、支払いは Power Automate のライセンスと別建ての Copilot Credits です。単価は 100 アクションごとに 13 クレジット、1 クレジットは 0.01 米ドルなので 100 アクションで 0.13 米ドルです。エージェントが呼び出す処理や、途中で AI のプロンプトや文書処理を挟む処理はこの層で考えます。

3 層のどこに入るかは、使うコネクタとトリガーで決まります。同じ「承認」でも、SharePoint リストの項目で承認を回すなら 1 層目、基幹システムの SQL Server から取った金額で承認を回すなら 2 層目、AI が請求書を読んで金額を埋めてから承認に回すなら AI Builder 分がクレジットになります。

4 つの例で、どの層にいくらかかるか

30 人から 300 人の会社でよく出る 4 つの自動化を、2026 年 10 月 30 日時点の単価で置いてみます。金額は公式の単価に当社が仮定した件数を掛けた試算で、実際の請求額ではありません。

例 1。Forms の申請を承認に回して Teams に知らせる。 経費精算の事前申請や備品の購入申請です。Forms のトリガー、承認(Approvals)、Teams の投稿、SharePoint リストへの記録はすべて標準コネクタなので、1 層目で足ります。追加費用は 0 円です。注意点は 2 つあります。承認待ちも含めて 1 回の実行は最長 30 日で、それを過ぎた承認は期限切れになります。年に数回しか申請が来ないフローは、90 日間トリガーされないと停止の対象になります。Premium の所有者のフローと、Process などの容量ライセンスを割り当てたフローはこの停止の対象外ですが、付属の権利だけで動かしているフローは所有者に届く通知を見落とさないようにします。

例 2。メールで届いた請求書の PDF から金額と取引先を読み取って Excel に書く。 読み取りに AI Builder の文書処理モデルを使います。AI Builder の容量は Microsoft 365 付属の権利に含まれないので、フローの所有者に Premium が要ります。11 月 1 日以降、ライセンスに付いてきた AI Builder クレジットは契約期間の終わりまで先に消費され、使い切ったあとと新しい契約では読み取りの費用が Copilot Credits になります。文書処理は 1 ページ 8 クレジットなので、3 ページの請求書 1 通で 24 クレジット、0.24 米ドルです。月に 200 通なら 4,800 クレジットで 48 米ドルです。通常のクラウドフローのアクションそのものにはクレジットはかからず、Premium の所有者 1 人分 2,248 円と合わせて、月 1 万円前後が試算の目安です。

例 3。日報の Excel を週に 1 回集計して Teams に貼る。 スケジュールトリガーで Excel Online の表を読み、集計して Teams に投稿するだけなら 1 層目です。ここで止まる原因は Excel の形です。Excel Online のコネクタの主なアクションはテーブルを前提にしています。結合セルや 2 段の見出しがある表は、先に形を直す必要があります。直し方は デジタル庁の Harunobu で Excel を採点して直す記事 にまとめました。集計の要約文を AI に書かせたくなったら、その 1 ステップだけがクレジット消費です。

例 4。在庫が下限を切ったら担当者に知らせる。 在庫を SharePoint リストで持っているなら 1 層目です。基幹システムの SQL Server から取るなら、オンプレミスデータゲートウェイとプレミアムコネクタが要るので 2 層目に上がります。所有者に Premium を付けるか、従量課金で払うかの選択になり、毎日 1 回動かすフローなら月 30 回で 18 米ドルになるため Premium の 15 米ドルのほうが安い計算です。

Microsoft 365 付属、Premium と従量課金、エージェントフローの 3 層

Microsoft 365 付属だけで動く自動化と、その上限

1 層目は無料に見えますが、上限があります。知らずに運用すると、ある日フローが遅くなったり止まったりします。

1 日の要求数。 Microsoft 365 のライセンスで動くフローは、正式には利用者 1 人 24 時間あたり 6,000 要求が上限です。要求はトリガーとアクションの数で数え、失敗したアクションも、再試行も、ページ送りも数えます。ただし今は全組織が移行期間で、上限はフロー単位で適用され、1 つのクラウドフローあたり 24 時間 10,000 要求で絞られています。正式値での制限が始まるのは、使用量レポートの一般提供から最低 6 か月後です。移行期間が終わると利用者単位に戻るので、所有者 1 人に大量のフローを集めている会社は、いまのうちに Process ライセンスかフローグループへ寄せる計画が要ります。5 分あたりの上限は 100,000 要求で、これはライセンスに関係なく同じです。

止まる条件。 エラーが 14 日続いたフロー、スロットリングが 14 日続いたフローは止まります。90 日間トリガーされなかったフローも止まることがあり、Premium の所有者のフローと、Process などの容量ライセンスを割り当てたフローは対象外です。1 回の実行は最長 30 日で、承認待ちの時間も含みます。実行履歴の保持も 30 日です。

プレミアムコネクタが使える唯一の例外が消えます。 Microsoft 365 付属の権利でも、Dataverse for Teams の環境の中ならプレミアムコネクタが使えました。この環境は 2026 年 11 月 15 日に新規作成が終わり、2027 年 9 月 15 日に停止、10 月 30 日に廃止です。いまこの例外に頼っているフローは、環境を Dataverse にアップグレードするか、必要なものを別の Dataverse 環境へ移し、その構成に要るライセンスを用意する判断が要ります。所有者に Premium を付けるだけでは、環境の停止と廃止は避けられません。

スマホの通知は 8 月に終わっています。 Power Automate のモバイルアプリは 2026 年 8 月 31 日に非推奨になり、ストアから消えました。モバイル通知を送るアクションはデザイナーに残っていますが、届け先がありません。承認は Teams の承認アプリ、ボタンフローの実行は Power Apps のモバイルアプリかブラウザーに移します(窓の杜、2026 年 9 月 1 日)。

コネクタの許可は管理者が握ります。 2026 年 6 月 4 日に一般提供された高度なコネクタポリシーは許可リスト型で、新しいコネクタは Power Platform の管理者が許可するまで使えません。現場が試したいコネクタがあるときは、ライセンスの前に管理者の許可を確認します。

Premium が要るのは誰か。自動フローは所有者、ボタンは実行者全員

2 層目で最も相談が多いのが「誰にライセンスが要るのか」です。ルールは 3 つです。

  1. 自動フローとスケジュールフローは、所有者のライセンスで判定します。 誰がトリガーしても、中でどのアカウントの接続を使っても、所有者 1 人に Premium があれば動きます。
  2. ボタンフロー(インスタントフロー)は、実行した人のライセンスで判定します。 プレミアムコネクタが入っていれば、実行する全員に Premium が要ります。全員分を買う代わりに、そのフローに Process ライセンスを付ける方法があります。
  3. プレミアムコネクタを使わないフローは、Microsoft 365 のライセンスで足ります。 ボタンフローでも同じです。

ここで出てくる逃げ道が、Premium を 1 本だけ共有のサービスアカウントに付けて、大勢がそのアカウントのフローを使う運用です。Microsoft はこれをマルチプレキシングと呼び、ライセンスを減らす目的で使うのは違反だと明記しています。線引きは「誰が価値を受け取るか」です。SharePoint リストに項目が追加されたら所有者にだけメールするフローは、多くの人が項目を入れても所有者 1 人のライセンスで構いません。同じフローが項目を入れた人にもメールを返すなら、その人も Premium が要ります。

Premium の所有者が退職してライセンスが外れると、フローは性能を落とした状態になり、所有者全員に通知が届き、14 日放置すると止まります。所有者を個人にしているフローは、共同所有者を置くか、ソリューションに入れて所有者を変えられるようにしておきます。

申請から承認、通知までの流れで、どこから Premium と従量課金が始まるか

2026 年 10 月 30 日時点のライセンスと価格を 1 つの表にします。米ドルは米国の価格ページ、円は Microsoft の日本語ページの掲載値で、税抜・年払いです。日本語ページには、掲載価格はマーケティング目的で実際の請求額は条件で変わるという補足があります。

ライセンス 米ドル 円(税抜・年払い) 何ができるか 1 日の要求数(正式値)
Microsoft 365 付属 追加なし 追加なし 標準コネクタのクラウドフロー 6,000/人(移行期間は 10,000/フロー)
Premium 15/人・月 2,248 プレミアムコネクタ、カスタムコネクタ、ゲートウェイ、有人 RPA、プロセスマイニング 50 MB 40,000/人(移行期間は 200,000/フロー)
Process 150/ボット・月 22,488 無人 RPA、クラウドフロー 1 本への専用容量。最大 10 個まで重ねられる 250,000/ライセンス
Hosted Process 215/ボット・月 32,233 Process に Microsoft がホストする仮想マシンを追加 250,000/ライセンス
従量課金(プレビュー) プレミアムのフロー 0.60/回、無人 RPA 3.00/回 円単価の掲載なし 標準コネクタだけのフローは課金されない 所有者か実行者のライセンスに従う

Process ライセンスは 1 つで 24 時間 250,000 要求の容量を 1 本のフローに与えます。フローグループを使うと、同じ 250,000 要求を最大 25 本のソリューション対応フローで分け合えます(2026 年 7 月 30 日に一般提供)。以前の Per Flow プランは旧プランで、更新せず Process に置き換えるよう案内されています。

従量課金という 3 つ目の払い方

ライセンスを買わずに、動いた回数だけ Azure のサブスクリプションに請求する従量課金があります。2026 年 10 月 30 日時点でプレビューです。

単価。 プレミアムのクラウドフローと有人のデスクトップフローは 1 回 0.60 米ドル、無人のデスクトップフローは 1 回 3.00 米ドルです。ホスト型 RPA も 3.00 米ドルですが、プレビュー価格で一般提供時に変わる可能性があると明記されています。標準コネクタだけのフローは課金されません。デザイナーでのテストと、失敗した実行の再送信も無料です。クラウドフローと有人のフローでは、子フローを呼んでも親の 1 回分だけです。無人のデスクトップフローは親と子の両方が課金されます。

分かれ目は月 25 回。 Microsoft の比較表では、所有者 1 人の自動フローが 3 か月で 145 回動いた場合、Premium なら 45 米ドル、従量課金なら 87 米ドルで、Premium を勧めています。15 米ドルを 0.60 米ドルで割ると 25 回なので、所有者 1 人のフローは月 25 回で同額、26 回以上なら Premium、季節だけ動くフローや、たまにしか動かないのに実行者が 10 人いるボタンフローなら従量課金が安い、という読み方になります。同じ表で、10 人が実行するボタンフローは Premium 10 本で 450 米ドル、従量課金で 87 米ドルです。

2 つの注意。 従量課金を有効にした環境では、Process ライセンスと無人 RPA アドオンは無視され、その環境の無人実行はすべて 1 回 3.00 米ドルで課金されます。Process に頼るフローは従量課金の環境に置かないでください。もう 1 つ、プレビュー中は 1 つのフローに課金される回数に 1 日 1,000 回の上限があり、管理センターのレポートには実数が出ますが Azure への請求はそれより少なくなることがあります。回数の多いフローは固定額の Process を使うよう案内されています。

Premium と従量課金の月額の試算 3 パターン

11 月に変わる 3 つ。それぞれ何をしておくか

11 月 1 日。AI Builder クレジットの提供が終わります。 2025 年 11 月 1 日に容量アドオンの新規販売が終わり、2026 年 11 月 1 日にアドオンとライセンス付属のクレジットがともに提供終了です。既存のクレジットは契約期間の終わりまで使えますが、更新や新規のライセンスには付きません。使う順番は AI Builder クレジット、足りなければ Copilot Credits、どちらも無ければ実行がブロックです。自動変換も換算率もありません。やることは 3 つです。Power Automate ポータルの AI Builder アクティビティで、どのフローが文書処理やプロンプトを使っているかを洗い出す。単価表で Copilot Credits に置き換えたときの月額を試算する(文書処理 8 クレジット/ページ、プロンプトは基本 0.1、標準 1.5、プレミアム 10 クレジット/1,000 トークン)。アドオンの自動更新を管理センターで切る。消費量の計算は通常 1 日 1 回ですが 5 日以上遅れることがあり、その間は前回の計算結果のまま扱われるので、超過が見えにくい点も覚えておきます。

11 月 15 日。Dataverse for Teams と、管理されていない開発者環境が新しく作れなくなります。 Dataverse for Teams は 2027 年 9 月 15 日停止、10 月 30 日廃止。開発者環境は 12 月 15 日に停止が始まり、2027 年 1 月 15 日に削除が始まります。現場の担当者が個人で作った開発者環境にフローが残っていないかを、11 月中に棚卸しします。残っていればソリューションに入れてサンドボックス環境へ移します。同じ 11 月 15 日に Release Planner も終了します。Microsoft は 2026 年 8 月 25 日に、半期ごとのリリースウェーブ方式をやめて AI at Work roadmap での随時公開に移ると発表し、9 月から 11 月 15 日までが移行期間です。変わるのは予定の公開のしかたで、今後の予定はロードマップの ID で追います。

11 月 30 日。説明文からフローを作る機能(Describe it to design it)が終わります。 既存のフローは削除も移動もされません。Microsoft が案内する代わりは、組織が承認した AI アシスタントの Power Automate プラグイン、手作業のデザイナー、テンプレートの 3 つです。ホーム画面の「Copilot で作成」がどうなるかは、10 月 30 日時点の公式ページ(9 月 18 日更新)に手順が残っていて確定していません。

Copilot は Power Automate のどこに残るか

終わるのは説明文からの作成だけで、デザイナーの中の Copilot は残ります。新しいデザイナーでだけ使え、フローの修正、何をするフローかの説明、失敗した実行の原因調査ができます。公式ページは、Copilot は英語に最適化されていて他の言語は限定的な対応で、一部が英語で表示されることがあると書いています。日本語で頼んで英語の提案が返ってきても故障ではありません。

もう 1 つの入口が、GitHub Copilot CLI と Claude Code 向けの Power Automate プラグインです(公式ページの更新日 2026 年 9 月 14 日)。ターミナルから自然言語でクラウドフローの作成、編集、実行、失敗した実行の調査、接続の管理ができ、デスクトップフローの一覧と実行もできます。Node.js 18 以上と Azure CLI でのサインインが前提で、作ったフローは停止状態で作られるので、必ず内容を確認してから有効にします。デスクトップフローのスクリプト編集はできません。プラグインは利用者本人の ID で Power Automate を呼ぶので、ライセンスもコネクタの許可も本人のものがそのまま適用されます。Claude Code なら /plugin marketplace add microsoft/power-platform-skills のあと /plugin install power-automate@power-platform-skills で入ります。

Copilot Credits Guide の 2026 年 11 月版は、Power Automate でクレジットがかかるのは AI かエージェントの機能を呼んだときだけだと整理しています。Copilot Studio のエージェントを埋め込んだとき、プロンプトや文書処理などの生成 AI の機能を使ったとき、付属の権利を超えて AI ツールを動かしたときの 3 つです。フローの設計そのものにクレジットはかかりません。

付け加えると、2026 年 9 月 23 日のリリースノートで Outlook の Copilot に、メールの削除・移動・コピー・分類を自然言語で頼む操作が入りました。まとめて処理するときやルールを変えるときは確認が入ります。受信トレイを分類するためだけに作っていた個人用のフローは、利用者が Copilot に直接頼む形に置き換わり、フローの本数を減らせる場面が出てきます。

エージェントフローに渡す判断

3 層目のエージェントフローは、Copilot Studio の標準ハーネスの中で作る、ルールどおりに動くフローです。同じ入力なら同じ出力を返し、トリガーは手動、スケジュール、他のイベントやエージェントからの呼び出しです。Power Automate のクラウドフローとの違いは 4 つです。

項目 Power Automate クラウドフロー エージェントフロー
払い方 Power Automate のライセンスか従量課金 Copilot Credits。100 アクションごとに 13 クレジット
Power Platform の要求数の上限 適用される 適用されない(Copilot Studio 側で計測)
容量を使い切ったとき スロットリングで遅くなり、14 日続くと停止 前払いの容量を使い切ると新しい実行がブロック。実行中のものは完走
変換 クラウドフローをエージェントフローに変えられる 戻せない

渡すべきなのは、エージェントから呼ばれる処理と、途中で AI のプロンプトや文書処理を使う処理です。エージェントフローの中の AI は常に Copilot Credits を消費し、クラシックなフローを変換すると AI Builder クレジットは使えなくなります。変換にはフローをソリューションに入れておくことと、環境に前払いか従量課金の Copilot Credits があることが条件です。Microsoft 365 Copilot(Microsoft は 2026 年 8 月に Microsoft Copilot へ名称を変えたと Copilot Credits Guide 2026 年 11 月版に記載。本記事では、個人向けの Microsoft Copilot と区別するため従来名で書きます)のライセンスを持つ利用者がエージェント経由で呼んだフロー(トリガーが「エージェントがフローを呼び出したとき」のもの)は無料で、容量切れのブロックの対象にもなりません。スケジュールやメール受信など他のトリガーで動くエージェントフローは、ライセンスの有無にかかわらず標準の単価でクレジットを消費します。デザイナーやテストチャットからのテスト実行はフローのアクション分の容量を使いませんが、フローの中の AI Builder のプロンプトやモデルはテストでもクレジットを消費します。

逆に、毎日同じ手順で動くだけで AI を使わない処理は、クラウドフローのままのほうが費用を読みやすいです。Qiita の検証記事(2026 年 5 月 28 日)では、環境にクレジットを割り当てていない状態でメール受信トリガーのエージェントからエージェントフローを呼ぶと実行が拒否され、従量課金を割り当てると成功したと報告されています。同じ会社の Microsoft 365 Copilot ライセンスがあっても、構成によって結果が変わる例です。Copilot Studio 側の全体像は Copilot Studio での自動化の記事 で扱います。

止まったときに見る場所

Power Automate のフローは、作った日より止まった日に問題になります。見る順番を決めておきます。

実行履歴。 失敗したアクションの入力と出力を見るのが最初です。接続の期限切れ、権限の変更、相手の表の形の変更で止まることがほとんどです。履歴は 30 日で消えるので、月に 1 回しか動かないフローは次の実行までに確認します。

スロットリングの印。 フローチェッカーに「操作がスロットリングされました」と出て、トリガーに赤い印が付いたら要求数の上限です。Power Platform Community には、メールを Teams に通知するフローが 10 か月問題なく動いたあとに突然スロットリングされ、前夜のメールが処理されなかったという投稿があります。回答者の助言は、Premium に上げ、それでも足りなければフロー 1 本に容量を付けるライセンス(回答当時の呼び名は per flow プラン。いまは Process に置き換わっています)を使うことと、トリガー条件で不要なメールを最初から除外することでした。Microsoft Q&A には 2026 年 3 月 11 日に、サービスアカウントで SharePoint を呼ぶフローの上限を外せるかという質問があり、モデレーターの答えは外せない、でした。SharePoint 側に利用者 1 人 5 分 3,000 要求の制限があり、Power Platform 側は 14 日続くスロットリングで停止します。対策は Retry-After を守って同時実行を減らすこと、Process ライセンスを付けることです。

所有者の変化。 Premium の所有者がライセンスを失うと 14 日で止まります。退職や異動のときに、その人が所有するフローの一覧を Power Platform 管理センターで出すのを手順に入れます。

自分で直す機能はこれから。 2026 年のロードマップには、UI 自動化のセレクターを AI が直す項目(ID 577869、プレビュー 2026 年 7 月、一般提供 2027 年 3 月予定)があります。エージェントフローの自己修復と合わせた話は、11 月 2 日公開の別の記事で扱いました。今日の時点では、止まったフローを直すのは人の仕事です。

2026 年 11 月以降に予定されているもの

AI at Work roadmap の公開データ(2026 年 10 月 30 日取得)から、Power Automate の項目と、フローに関係する Copilot Studio と Work IQ の項目を抜きます。予定は Microsoft の表記で、遅れることがあります。

ID 項目 予定
573278 デスクトップフローをスケジュールトリガーで直接実行 提供済み(一般提供 2026 年 10 月)
561026 SharePoint フォームから文書を生成するアクション 一般提供 2026 年 10 月
576765 オブジェクト中心のプロセスマイニングで Process Intelligence Studio 一般提供 2026 年 10 月
573292 デスクトップフローのフローチャート作成モード プレビュー 2026 年 10 月、一般提供 11 月
566999 エージェントとアプリから呼ぶフローの高速モード(Copilot Studio) 一般提供 2026 年 11 月
570672 エージェントとエージェントフローを人の入力と承認で一時停止(Work IQ) プレビュー 2026 年 11 月、一般提供 2027 年 1 月
577869 AI による UI 自動化の修復 プレビュー 2026 年 7 月、一般提供 2027 年 3 月

Microsoft Ignite 2026 は 11 月 17 日から 20 日にサンフランシスコで開かれます(オンライン参加あり)。Power Automate についてどんな発表があるかは公表されていません。この記事では予想を書かず、上の表の 11 月予定の項目が予定どおり出るかを、Ignite の週に確認する前提にしています。

KOIYALの見解

Power Automate の相談で当社が最初に聞くのは、作りたい自動化の中身ではなく、そのフローの所有者が誰で、実行するのが誰で、どのコネクタを通るかです。この 3 つが決まると層が決まり、層が決まると費用と止まり方が決まります。逆に、作ってから層が分かると、Premium を全員に買う話になったり、共有アカウントで逃げてライセンス違反になったりします。

当社の整理では、30 人から 300 人の会社の自動化の大半は 1 層目で足ります。Microsoft 365 の中で完結する申請、通知、集計、記録は標準コネクタで組めて、追加費用は 0 円です。1 層目で止まる原因は、要求数の上限と、Excel や SharePoint のデータの形です。だから当社は、Premium を検討する前に、表の形を直すことと、トリガー条件で無駄な実行を減らすことを先に勧めます。

2 層目に上がる判断は、基幹システムのデータを触るかどうかでほぼ決まります。ここは所有者 1 人分の Premium で済むことが多く、月 25 回の分かれ目で従量課金と比べれば十分です。3 層目のエージェントフローは、AI を挟む処理とエージェントから呼ぶ処理に限って使い、毎日同じ手順の処理を無理に移さないのが、2026 年 10 月時点の費用感では妥当だと考えています。11 月の 3 つの変更は、どれも「いま動いているものが突然止まる」類ではありませんが、AI Builder クレジットの終了だけは請求書処理のフローを持つ会社に直接響くので、11 月中に消費量の洗い出しを終えておくことを勧めます。

次の行動

  1. フローの棚卸し表を作る。 Power Platform 管理センターで環境ごとのフローを出します。1 本ごとに、所有者、トリガーの種類、コネクタが標準かプレミアムか、月の実行回数、AI Builder の使用有無を書きます。これだけで 3 層のどこに何本あるかが見えます。
  2. 11 月の 3 つの日付に対応する。 11 月 1 日までに AI Builder アクティビティで対象フローを特定して Copilot Credits の月額を試算する。11 月 15 日までに開発者環境と Dataverse for Teams の中のフローを移す。11 月 30 日以降にフローを作る AI を使うなら、デザイナーの Copilot か Claude Code・GitHub Copilot CLI のプラグインを情報システムで試しておく。
  3. Premium を買う前に 2 つ直す。 Excel と SharePoint の表の形をテーブルにできる状態に直し、トリガー条件で不要な実行を減らします。それでも要求数が足りない、または基幹システムに触るなら、所有者 1 人分の Premium を月 25 回の分かれ目で従量課金と比べ、フロー 1 本に専用の容量が要るときだけ Process を足します。

棚卸し表を作ったあとの仕分けを一緒にやりたい会社は、AI・DX 支援の初回の打ち合わせで、表をもとに進めます。どのフローを 1 層目に残し、どれに Premium を付け、どれをエージェントフローに渡すかを、その場で決めます。お問い合わせの本文に、いま動いているフローの本数を書いてください。止まって困った経験があれば、その内容も 1 つ添えていただければ、初回の前に当社で 3 層の仕分け案を作ります。

参考