Copilot のハーネスとは何か。2026年10月28日に Microsoft が「Microsoft Copilot harness」を発表してから、この問いを情報システムの担当者から受けることが増えました。Copilot Studio の設定画面には以前から GitHub Copilot ハーネスの選択肢があり、どれを選ぶかで課金が変わります。一方で、AI に仕事を任せる会社の間では、ハーネスは「AI のまわりに会社として組む仕組み」の意味で使われてきました。同じ言葉が 2 つの範囲で使われています。

この記事は、2026年10月30日時点の Microsoft の公式資料をもとに書きます。まず Microsoft の言うハーネスと会社として組むハーネスの範囲を分けます。次に Copilot Studio の 3 種類のハーネスの違いと課金、会社のハーネスの 4 部品に対応する Microsoft 365 の機能、30〜300 人の会社が Agent 365 なしで組む順番。最後に、手順をどこまで書くかを考える材料になる 2026年10月の論文 4 本です。Microsoft 365 Copilot は、Copilot Credits Guide の 2026年11月版に 2026年8月に Microsoft Copilot へ名称を変えたと記載があります。この記事では、個人向けの Microsoft Copilot と区別するため従来名で書きます。

読者は、Copilot のライセンスを入れたあとで「エージェントを作る前に、会社として何を決めておくか」を任された情報システムの担当者と、その報告を受ける経営者を想定しています。当社が 2026年7月時点で運用していたハーネスの実物は 別の記事に書きました。本記事は Copilot 環境に限ります。

結論を先に書きます。

  1. Microsoft の言うハーネスは、エージェントを動かす実行の層です。 Copilot Studio では標準ハーネス、Microsoft Copilot ハーネス(2026年10月28日までの名前は GitHub Copilot ハーネス)、顧客対応ハーネスの 3 種類があり、どれで作るかが課金と使える機能を決めます。
  2. 会社として組むハーネスはもっと広く、手順・権限・検証・記録の 4 部品です。 Microsoft 365 にはその部品がほぼ揃っていて、会社のプロンプト、公式の情報源の指定、エージェント公開の承認、Agent Evaluation、Purview の監査ログは Agent 365 や E7 がなくても使えます。
  3. 最初の一手は権限の点検です。 Copilot は新しい権限を作らず、既存の権限の穴を見せます。SharePoint のサブフォルダが見つからない問い合わせは検索の索引の話で、2026年2月に報じられた機密ラベル付きメールの不具合は、ラベルで除外したはずのものが読まれた製品の不具合でした。どちらも、何を読ませてよいかを会社の側で決めていないと気づけません。
  4. 手順は書きすぎないほうが当たります。 2026年10月26日に投稿された研究では、手順や役割を固定した作り込みのエージェントより、強いモデルに自由に調べさせるシンプルなハーネスのほうが正答率で上回りました。会社が固定するのは禁止と承認と根拠の範囲で、途中の探索はモデルに任せる線引きを勧めます。

ハーネスという言葉。Microsoft の定義と、会社として組む範囲

Microsoft は 2026年10月28日の公式ブログで、ハーネスをこう定義しました。「モデルが知能を供給するなら、ハーネスはモデルのまわりにあるすべてである」。指示、文脈、ツール、実行環境を与えて、モデルを仕事に向かわせる層のことです。同じ発表によると、この Microsoft Copilot ハーネスは Copilot Code、Copilot Studio、GitHub Copilot のアプリ、CLI、VS Code を動かしています。20 を超えるモデルに対応し、作業に応じてモデルを振り分け、Microsoft Foundry で提供されます。Foundry Agent Service では公開プレビューで、ハーネスの実行環境の課金は 2026年12月1日に始まります。それまで実行環境は無料で、モデルの推論と別建てのツールは従来どおり課金されます。12月1日以降の単価は、サンドボックスの計算資源が 1 vCPU 時あたり 0.0994 米ドル、メモリーが 1 GiB 時あたり 0.0118 米ドルです(地域と契約で変わると補足があります)。

この定義は、Microsoft 自身の言葉を借りれば「モデル以外のすべて」です。考え方としては、会社として組むハーネスと近い場所にあります。ただし製品としての Microsoft Copilot ハーネスが担うのは、いつモデルを呼ぶか、何を渡すか、返ってきたものをどう解釈してどのツールを呼ぶか、の実行の部分です。会社の運用ルール、誰が承認するか、何を記録して誰が見るか、までは含みません。

会社として組むハーネスを、この記事では 4 つの部品にまとめます。

部品 中身 Microsoft のハーネスとの関係
手順 会社のプロンプト、スキル、根拠にしてよい情報源とだめな情報源 モデルに渡す指示と文脈。ここは重なる
権限 誰が何をしてよいか、どの操作の前に人の承認を挟むか、何に触らせないか 実行の層が参照するが、決めるのは会社
検証 公開前のテストと、変更のたびの再テスト 含まれない。Copilot Studio の別機能
記録 監査ログ、利用状況、費用の見える化 含まれない。Purview と Copilot Analytics

Microsoft の harness を入れても、会社のハーネスはできません。逆に、会社のハーネスの 4 部品は、どのハーネスでエージェントを作る場合にも要ります。

Copilot Studio の 3 種類のハーネス

Microsoft Learn のハーネスの解説ページ(ms.date 2026年10月19日)は、ハーネスを「あなたが設計したエージェントと、選んだモデルの間にある実行の層」と説明しています。Copilot Studio で作るものはすべて、3 つのハーネスのどれかで動きます。

ハーネス 向いている用途 動き方 課金 状態
標準ハーネス 社内ヘルプデスク、決まった手順で回す申請の受付、ルールどおりの会話 作成者が決めたトピックと経路どおりに動く。既存のプロンプト集と社内の知識を使える 機能ごとの単価表 一般提供
Microsoft Copilot ハーネス(旧 GitHub Copilot ハーネス) 請求書を読んで発注書と見比べ、例外を承認に回すような複数ステップの業務 目的を渡すと手順を分けて実行し、失敗したら別の経路を試す。Word・Excel・PowerPoint・PDF を作成編集する。スキルとメモリーに対応。各タスクは Copilot Studio が管理するサンドボックスで動く Copilot Credits の使用量課金。作成時の評価やテストも対象 2026年8月3日に一般提供
顧客対応ハーネス Web チャットと電話での顧客対応。有人への引き継ぎ 専門のサブエージェントを複数組み合わせる。各サブエージェントが人への引き継ぎ経路を持てる Copilot Credits の使用量課金 公開プレビュー

名前の変更を先に押さえます。Microsoft は 2026年10月28日の Copilot Studio ブログで、GitHub Copilot ハーネスを Microsoft Copilot ハーネスに改名すると発表しました。変わるのは名前だけで、既存のエージェントは機能も課金も変わらずに動き続けると書かれています。製品の画面の表記は数週間かけて切り替わり、Microsoft Learn の解説ページは 2026年10月30日時点で旧名のままです。この記事では両方を書きます。もう 1 つ、Learn のページに「GitHub Copilot ハーネスは Copilot Studio の仕組みであり、GitHub Copilot のサービスではない」と明記があります。エージェントが動くときに顧客データは GitHub Copilot のサービスへ送られず、GitHub Copilot の契約も要りません。

同じ改名の発表に、Microsoft 社内の評価の数字が載っています。同じタスクと同じモデルで比べて、Microsoft Copilot ハーネスの合格率は標準ハーネスより OpenAI のモデルで 10.8 ポイント、Anthropic のモデルで 22.1 ポイント高い。モデルを変えるより、ハーネスを変えるほうが差が大きかったとあります。ツール呼び出しが失敗したあとに解決を試み続けた割合は 84〜91% で、標準ハーネスの 7% 未満と差がありました。いずれも社内評価で、日、ビルド、モデル、構成で変わると脚注にあります。数字そのものより、「モデルを替えるより、まわりの仕組みを替えるほうが結果が変わる」と Microsoft 自身が言ったことを覚えておくと、この記事の後半がつながります。

縦軸に手順を決めるのは作成者かモデルか、横軸に相手は社内か顧客かを取り、標準ハーネス、Microsoft Copilotハーネス、顧客対応ハーネス、Copilot Coworkの4つを置いた図。会社のハーネスの4部品はどの位置にも要る

どれで作るか。Microsoft の選び方の指針

Learn の比較ガイド(ms.date 2026年9月30日)は、選び方をかなりはっきり書いています。短くて範囲の決まった仕事、決まった経路と明示的な管理が大事な仕事は標準ハーネス。長く走る、複数のシステムをまたぐ、途中で自分の成果を評価して直す必要がある仕事は Microsoft Copilot ハーネス。そのうえで、強いハーネスは単純な問題を過剰に処理し、結果を良くしないままクレジットの消費と待ち時間を増やしうる、と注意しています。コネクタや MCP サーバーを使うから、動的な計画が少しあるから、それだけでは強いハーネスは要らない、とも書かれています。

既に動いている標準ハーネスのエージェントを移す判断については、移行を作り直しとして扱い、品質や長時間実行など場面ごとの明確な利点があるときだけ移す、と書かれています。動いているものを、新しいハーネスがあるからと移す必要はありません。

30〜300 人の会社で当てはめると、社内の問い合わせ対応と申請の受付は標準ハーネス、請求書や見積の読み取りと見比べのように複数の文書とシステムをまたぐ処理は Microsoft Copilot ハーネス、自社サイトのチャットや電話の一次対応は顧客対応ハーネス(プレビュー)、と分かれます。費用の単価と試算は Copilot Studio の自動化の記事に、エージェントを作る前の権限の決めごとは 権限設計の記事に書きました。

会社のハーネスの 4 部品と、Microsoft 365 にある機能

ここからが本題です。4 部品それぞれに、2026年10月30日時点で Microsoft 365 にある機能を並べます。Microsoft は全体の枠組みを「Copilot controls」(Learn 上の見出し。以前は Copilot Control System と呼ばれていました)と呼び、柱をセキュリティとガバナンス、管理、計測とレポートの 3 本にしています。対象は Microsoft 365 Copilot、Copilot Chat、Microsoft 製のエージェント、Copilot Studio で作って Microsoft 365 に公開したエージェントです。

手順。会社のプロンプトと、根拠にしてよい情報源

機能 何ができるか 状態
会社のプロンプト 管理者が Microsoft 365 管理センターで会社のプロンプトを作って公開し、Copilot Chat のおすすめと Prompt Gallery に表示する 2026年6月に展開
Prompt Gallery の利用データ 利用者が保存・いいね・共有したプロンプトと、チームに共有されたプロンプトを管理者が書き出せる 一般提供
公式の情報源の指定 管理者が最大 100 の SharePoint サイトを公式の情報源に指定し、Copilot の検索と Chat の回答で優先させる。一括の取り込みと書き出しに対応 2026年9月に展開
Web 検索の除外 回答の根拠にする Web 検索から最大 1,000 ドメインを除外する 2026年7月に展開
スキル(個人) Cowork の独自スキル(SKILL.md、最大 50)。PowerPoint の利用者定義スキル(Web は 2026年9月23日、Windows は 10月6日のリリースノート) 一般提供
スキル(全社配布) 管理者が承認した PowerPoint のスキルを特定の利用者、グループ、全社に配布。2026年9月のまとめに記載があり、Frontier プログラムから展開(MC1463509) 一般提供の時期は未確認

手順の部品で会社が最初にやることは、プロンプトを書くことより、根拠にしてよい場所を決めることです。公式の情報源に規程と手順書のサイトを入れ、Web 検索から除外するドメインを決めると、同じ質問に対する答えのばらつきが減ります。プロンプト集は、現場で使われて残ったものを管理者が会社のプロンプトに昇格させる順番のほうが続きます。

権限。誰が何をしてよいか、どこで人が承認するか

機能 何ができるか 状態
Cowork の操作承認 メール送信や Teams 投稿の前に承認を求める。中と高のリスクには表示が付く。自動タスクは作成者の権限で動き、デフォルトで送信前に承認を求める 一般提供
エージェント公開の承認 社員が Copilot Studio、Foundry、Agents Toolkit で作ったエージェントを全社に出すとき、Microsoft 365 管理センターの Agents > All agents > Requests で管理者が説明、所有者、データ、ツール、権限を確認して公開する。更新も承認が必要で、承認までは前のバージョンが使われる 一般提供
支出ポリシー Cowork や従量課金の機能を使える人を指定するアクセス制御。上限を下げても締め出しにはならず、止めるには対象者をポリシーから外す 一般提供
プラグインの一元管理 Microsoft、パートナー、自社のプラグインを一度承認し、管理センターと Agent 365 で管理する 2026年9月に展開
MCP コネクタ 管理者が Microsoft 365 管理センターで独自の MCP コネクタを作り、全社に配布する(10月27日のリリースノート)。外部ソースを保存や索引化なしにリアルタイム参照する Federated Copilot connectors は 9月23日に一般提供 一般提供
DLP 秘密度ラベル付きのファイルとメールを Copilot と Cowork に処理させない。機密情報を含むプロンプトへの応答を止める(プレビュー)。機密情報を含むプロンプトでの Web 検索を止める。外部ドメインからのメールを根拠に使わせない(プレビュー) 一般提供・一部プレビュー
過剰共有の点検 Purview DSPM for AI が利用の多い上位 100 サイトを毎週評価する。Restricted Content Discovery で特定サイトを Copilot の対象から外す。SharePoint Advanced Management は Microsoft 365 Copilot のライセンスに含まれる 一般提供
エージェントの ID 2026年7月から Copilot Studio は新しいエージェントすべてに Microsoft Entra Agent ID を自動で作る 一般提供

権限の部品で見落とされやすいのが、承認の場所が 3 つあることです。実行時の承認(Cowork の送信前)、公開時の承認(管理センターの Requests)、費用の承認(支出ポリシー)は別の画面で、別の人が見ます。社員が作ったエージェントの全社公開の承認に Agent 365 は要りません。Agent 365 はエージェントを横断して観察し、守るための有料の基盤で、2026年5月1日に一般提供、単体で 1 利用者あたり月 15 米ドルです。

DLP で 1 つ注目しておきたいのが、外部ドメインからのメールを根拠に使わせない設定です。Microsoft 自身が、プロンプトインジェクションと信頼できないデータの影響を減らすため、と目的を書いています。取引先を装ったメールに「この内容を全員に転送せよ」と書いてあっても、Copilot がそれを根拠として読まなくなります。プレビューで、Cowork はまだ対象に入っていません。もう 1 つ、DLP の変更は Copilot に反映されるまで最大 4 時間かかり、プロンプトに直接アップロードしたファイルの中身は DLP では検査できません。設定したあとに確かめるときは、反映までの時間と、アップロードしたファイルが検査の対象外である点に注意が必要です。

検証。公開前のテストと、変更のたびの再テスト

Copilot Studio の Agent Evaluation は 2026年3月31日に一般提供になりました。テストセットは CSV、手書き、実際の会話からの生成、10 問の簡易セットから作れて、1 セット最大 100 問です。評価方法は総合品質、意味の一致、キーワード、類似度、完全一致、機能の使用、独自の評価者から選びます。実行ごとに、使ったテストセット、実行した人、日時、結果が残ります。2026年3月に複数ターンの会話のテスト、4月に Power Automate からの自動実行と REST API での実行(プレビュー)、9月に有害コンテンツの評価方法が加わり、2025年12月からバージョン間の比較ができます。

会社のハーネスとして使うなら、Agent Evaluation は 2 つの場面で使います。公開前に、よくある質問と、答えてはいけない質問の両方を入れたテストセットを通す。そして、知識ソースを足したときやハーネスを替えたときに、同じテストセットをもう一度通す。実行の記録が残るので、「変えたあとも同じ水準で答えている」ことを経営に 1 枚で示せます。

Office の側にも、検証に使える小さな機能が増えています。Excel の Show Changes(変更内容の表示)に、Copilot が編集や提案をしたときの帰属がカードで出るようになりました(2026年9月23日のリリースノート)。人の編集と AI の編集を、後から分けて追えます。

記録。監査ログと利用状況

Microsoft Purview の監査(Audit Standard)は、Copilot、Cowork、Copilot Studio で作ったエージェントとのやりとりを自動で記録します。組織で監査が有効なら、追加の設定は要りません。記録に入るのは、参照したファイルやメール(秘密度ラベルの ID 付き)、エージェントの ID と名前とバージョン、プロンプトインジェクションの検知(XPIADetected)、脱獄の試みの検知(JailbreakDetected)、Web 検索を使ったか(BingWebSearch)、モデルの提供元です。モデルの提供元は、利用者が Auto 以外のモデルを選んだときに OpenAI か Anthropic かが残り、Cowork は 2026年10月30日時点で提供元を記録しません。Microsoft 以外の AI アプリの監査は従量課金で、180 日保持です。

利用状況は Copilot Analytics(Copilot ダッシュボード)で見ます。2026年10月6日に Cowork の導入と効果の指標とクレジット消費のデータが加わり、10月27日に Microsoft 365 Copilot アプリ、Edge、OneNote での操作と Outlook・Word・Excel・PowerPoint の主な用途の新しい指標が加わりました。9月には、Copilot の利用データから対象者を絞った Pulse アンケートを出せるようになりました。Agent 365 や E7 を持たない会社向けの案内もあります。MC1506727(2026年10月13日公開、10月19日更新)で、Microsoft 製と Microsoft 基盤のエージェントの利用者数、セッション数、例外率、実行時間を管理センターで見られるようにする、と書かれています。展開は 2026年10月下旬から 11月下旬です。リスク関連と広い管理の機能は Agent 365 か E7 が要ります。

会社のハーネスの4部品を、手順、権限、検証、記録、見直しの5つの手順で回す図。手順は会社のプロンプトと公式の情報源、権限は承認の3つの場所とDLP、検証はAgent Evaluation、記録はPurviewの監査ログとCopilot Analytics、見直しは月1回の棚卸し

30〜300 人の会社が、Agent 365 なしで組む順番

4 部品を一度に用意する必要はありません。当社が勧める順番は、権限、手順、承認、記録です。理由は、Copilot は新しい権限を作らず、既存の権限の穴を見せるからです。

  1. 権限の点検から始める。 DSPM for AI の上位 100 サイトの週次評価と、SharePoint の「外部ユーザー以外の全員」権限の詳細レポート(2026年10月6日のリリースノート)で、全社に開いているサイトを洗い出します。人事と経営の資料は Restricted Content Discovery で Copilot の対象から外します。ここを飛ばして手順を書いても、Copilot は見えてはいけないものを見えたまま答えます。
  2. 手順を会社のものにする。 規程と手順書のサイトを公式の情報源に入れ、Web 検索から除外するドメインを決め、現場で残ったプロンプトを 5 本だけ会社のプロンプトに昇格させます。
  3. 承認の場所を 3 つ決める。 Cowork の送信前の承認は誰が押すか(本人宛て以外は承認、を会社の決めにする)、エージェント公開の Requests は誰が見るか、支出ポリシーに誰を入れて上限をいくらにするか。この 3 つは Credits の記事と Cowork の記事に詳しく書きました。
  4. 記録を見る日を決める。 Purview の監査が有効かを確認し、月に 1 回、Copilot Analytics の利用状況と、エージェントの一覧を見る日を決めます。エージェントの棚卸しの手順は Agent 365 レジストリの記事にあります。

30〜300人の会社がAgent 365なしで会社のハーネスを組む4段の図。1段目は権限の点検、2段目は手順を会社のものにする、3段目は承認の場所を3つ決める、4段目は記録を見る日を決める。4段の上に、Agent 365やE7は4段ができてから、が乗る

DSPM for AI などの Purview の機能は、契約しているプランで使えるかを先に確認してください。Agent 365 や E7 は、この 4 段ができてから検討しても遅くありません。4 段がないままエージェントの管理基盤を入れると、一覧は出ても、誰が何を決めるかが空のままになります。

うまく動かない 4 つの型と、それぞれの対策

公式フォーラムと公表された不具合から、「Copilot が思ったとおりに動かない」を 4 つの型に分けます。それぞれ、会社のハーネスのどの部品で防ぐかが違います。

型 実例 原因 防ぐ部品
見つからない Microsoft Tech Community の 2026年1月の議論では、Copilot Studio のエージェントに SharePoint のサブフォルダだけを知識源にすると何も見つけられず、3 日待っても作り直しても同じだった。Microsoft の担当者の回答は、Studio は SharePoint の検索インデックスに頼っていてサブフォルダ単体では確実に取り込めない、ライブラリ全体か専用の小さなライブラリか個別ファイルで回避、だった 索引と権限 手順(根拠の範囲を、索引される単位で決める)
一部しか読まない Microsoft の公式文書に、Copilot Notebooks は参照資料の一部しか使わないことがあると注意書きがある。詳しくは Notebooks の記事 製品の仕様 検証(答えてほしい質問をテストセットにして、何を読んでいないかを確認する)
ラベルが効かなかった ITPro が 2026年2月19日に報じた不具合 CW1226324 では、Copilot Chat が送信済みと下書きのフォルダにある機密ラベル付きメールを要約できた。Microsoft は設定の更新を全世界に適用し、権限のない情報には誰もアクセスしていないと説明した 製品の不具合 記録(監査ログの AccessedResources と秘密度ラベル ID で、何が読まれたかを後から追える)
外部へ送られる 2026年5月に PromptArmor が公表した検証では、Cowork は本人宛てのメールと Teams メッセージを承認なしで送り、細工したスキルを読み込ませるとファイルの事前認証済みリンクを外に出せた 承認の例外とスキルの持ち込み 権限(過剰な権限の整理、ダウンロードの制限、スキルの出所の管理、監査ログの検知ルール。本人宛ての送信に承認を求める設定はないので、権限の側で止める)

4 つに共通するのは、Copilot の設定画面の中だけでは防げないことです。索引される単位、テストセット、監査ログの読み方、承認の例外は、会社のハーネスの側で決めます。

手順をどこまで書くか。2026年10月の論文 4 本

会社のハーネスで一番迷うのが、手順をどこまで細かく書くかです。当社も「同じ手順を 2 回書いたらスキルにする」を原則にしてきました。2026年10月26日に arXiv に投稿された 4 本の論文が、この線引きに材料を与えています。いずれも査読前で、数字は著者の報告です。

手順を固定しすぎると、決め手になる手がかりを飛ばす。 「Free to Look, Free to Reason」(arXiv:2610.35767)は、マイクロサービス障害の根本原因分析で、呼び出し手順を決めないシンプルなハーネス 3 種と、標準手順や固定の段階や役割分担を組み込んだ公開済みのエージェント 5 種、統計と因果の手法を比べた研究です。対象は検証済みの 90 件、6 つのモデル、3 段階の推論量。シンプルなハーネスが最も正確で、両方を動かしたすべてのモデルで作り込みのエージェントを上回りました。作り込みのエージェントはモデルの呼び出しの大きな部分を固定していて、その固定が決め手になる手がかりを飛ばした事例が示されています。強いモデルは主に安定性を、複数ターンのハーネスは主に能力を上げました。推論量を上げても正確さは数ポイントしか変わらず、実行時間は最大 7 倍になりました。

スキルは、実行の履歴から取り出せる。 「Hierarchical Skill Evolution for Coding Agent」(arXiv:2610.35616)は、コーディングエージェントの実行履歴から、タスク単位の手がかり、リポジトリ固有の候補、リポジトリをまたいで使える型の 3 段階で手順を取り出す方法です。モデルは固定したまま、外側の書き手と評価者の往復でスキルを育て、取り出した 10 個のスキルが複数のモデルとハーネスで成績を上げたと報告しています。会社のプロンプト集を、使われた履歴から候補を出して昇格させる運用の根拠になります。

ハーネス自体を変えるなら、非公開の評価を通してから。 「Infinity Machine」(arXiv:2610.35579)は、プロンプト、ツール、スキル、手順書をまとめて編集できるものとして扱い、変更は公開スコアと非公開の評価データ、費用の検査を通ったときだけ採用します。14 問題を 6 日、モデル利用料は約 180 米ドルで、費用の理由で却下されたハーネスの変更や、評価者の甘さを突いた提案も記録されています。Agent Evaluation のテストセットを、エージェントを作る人とは別の人が持つ運用に対応します。

AI の調査レポートは、出典より強く言い切る。 「Quantifying Claim Smoothing by LLM Research Agents」(arXiv:2610.35793)は、大量の文書を読んで書かせた長文レポートが、出典どうしの食い違いを 1 つの筋書きにならし、引用が支える以上に断定する現象を smoothing と名づけました。7 つのシステムと 4 つのデータセットで、一貫して出典より強い主張が出たと報告しています。Researcher や Deep Research の出力を社内の判断に使うなら、ガイドラインに「出典どうしの食い違いが消えていないか確認する」の 1 行が要ります。ガイドラインの書き方は 別の記事にまとめました。

4 本を会社のハーネスに当てはめると、こうなります。固定するのは、禁止(触らせないデータ、送らせない相手)、承認(送信前、公開前、費用)、根拠の範囲(公式の情報源、Web の除外)です。途中の探索、どの順番で調べるか、どのツールを先に呼ぶかは、モデルに任せます。Microsoft の比較ガイドが「より強いハーネスは単純な問題を過剰に処理する」と書いているのと、論文が「固定しすぎると手がかりを飛ばす」と書いているのは、同じ線の両側です。手順の細かさは Agent Evaluation の結果で決めます。書いた本人の安心のために増やすものではありません。

11月以降に予定されていること

  • 2026年11月17日〜20日、Microsoft Ignite 2026(サンフランシスコとオンライン)。セキュリティのガイドには Agent 365、Copilot と Cowork の保護、エージェントの Purview でのデータガバナンスのセッションが載っています。発表の中身は公表されていません
  • 2026年10月下旬〜11月下旬、Agent 365 なしで見られるエージェントの利用状況の展開(MC1506727)
  • 2026年9月25日の発表では、Agent 365 の費用管理を 2026年10月に Copilot Studio のエージェントにも広げる予定とされていました。提供状況は未確認です
  • 2026年12月1日、Foundry Agent Service の Microsoft Copilot ハーネスの課金開始
  • 2026年12月1日、販売店経由で新しく買う Copilot Business の従量課金がデフォルトで有効(デフォルトの上限は 1 人月 4,000 クレジットで、管理者が変更できます)。Microsoft 365 の基本ライセンスなしで Copilot を買える新商品も同日
  • 2026年12月、Copilot Tuning(会社のデータでモデルを調整する機能)の Copilot Studio での全世界一般提供(MC1454393)

誤解されやすい 4 点

  1. Microsoft のハーネスを入れれば会社のハーネスになる。 違います。Microsoft Copilot ハーネスはエージェントを動かす実行の層で、承認、検証、記録は別の機能と会社の決めごとで組みます。
  2. GitHub Copilot ハーネスを使うと GitHub にデータが送られる。 Learn のページが明確に否定しています。名前の由来は GitHub のエンジニアが作ったことで、顧客データは GitHub Copilot のサービスへ送られません。
  3. エージェントの承認には Agent 365 が必要。 社員が作ったエージェントの全社公開の承認は、Microsoft 365 管理センターの Requests でできます。Agent 365 は横断的な観察、保護、リスク管理のための有料の基盤です。
  4. DLP を設定すればアップロードしたファイルも守られる。 プロンプトに直接アップロードしたファイルの中身は DLP では検査できません。守れるのは、SharePoint と OneDrive のラベル付きファイル、メール、プロンプトに打ち込んだ文字です。

KOIYALの見解

Microsoft が「ハーネスはモデルのまわりにあるすべて」と定義したことは、会社にとって良い知らせだと考えています。モデルを替えるより、まわりの仕組みを替えるほうが結果が変わる、と Microsoft 自身が数字つきで言ったからです。モデルは数か月ごとに新しくなります。会社が積み上げられるのは、手順、権限、検証、記録の 4 部品のほうです。

ただし、Microsoft の harness と会社のハーネスを同じものだと思って導入を進めると、エージェントはよく動くのに、誰が承認したか、何を読んだか、変えたあとも同じ水準かが答えられない状態になります。当社が見てきた範囲では、Copilot の導入で困る会社の多くで、この 4 部品のどれかが空でした。モデルの性能で困っていた会社はほとんどありません。

順番は権限からです。Copilot は会社の権限の穴を見せるだけで、穴を作るわけではありません。穴を先に塞ぎ、根拠の範囲を決め、承認の場所を 3 つ決め、記録を見る日を決める。この 4 段は Agent 365 なしで組めます。そして手順は、書きすぎないこと。固定するのは禁止と承認と根拠の範囲までにして、細かさは Agent Evaluation の結果で決める。2026年10月の論文 4 本が示した線引きは、当社が自分たちのハーネスを運用してきた実感とも一致しています。

次の行動

  1. Microsoft Purview の DSPM for AI で、利用の多い上位 100 サイトの評価結果を 1 回見てください。全社に開いているサイトの数が、会社のハーネスの最初の 1 行になります。
  2. Copilot Studio でエージェントを作る前に、標準ハーネスか Microsoft Copilot ハーネスかを、Learn の比較ガイドの「短くて範囲が決まっているか」で決めてください。迷ったら標準から始めて、Agent Evaluation の結果で移すかどうかを判断します。
  3. 4 部品の棚卸しと、最初に固定する禁止と承認の一覧を、自社の業務と設定に合わせて 1 枚の表にしたい方は、AI・DX コンサルティングの初回の打ち合わせでご相談ください。Agent 365 なしで組める 4 段から一緒に決めます。

参考